東京周辺の温泉センターの取材は大変であった。
お客さんが多く、写真の許可を取るのが大変であった。
1 前野原温泉 さやの湯
強食塩泉 23.91グラム 41度
源泉掛け流し浴槽1ヶ所あり
緑白濁し香ばしい香りあり
東京板橋区の街中に温泉ができた。和風平屋の造りでゆったりとしている。ここは源泉掛け流し浴槽があるということで温泉仲間の評判も良い。白湯の浴槽もあるが一部温泉を使っている。
壷風呂の3連のものと源泉浴槽からオーバーフローする露天風呂で使われている。循環濾過のものであるが源泉が濃厚なため色と味覚に存在感がある。薄褐色透明、塩味、無臭の湯に加工されていた。
ここの目玉の源泉掛け流し浴槽は露天風呂の一角に1つだけあり、ここの湯は良かった。加熱しているだけで掛け流しで使われている。41度の強食塩泉で総計23910mgである。鉄分を4mg含有し緑白濁していた。
透明度は30センチほどで新鮮なためにまだ赤くなる前であった。塩味は同じである。匂いが特によく、鉄分と臭素の香りが混ざったのであろうか、香ばしい香りが放散されていた。
この一つの浴槽でここの評価はたいへん良くなった。このように掛け流し浴槽を1ヶ所造る温泉センターが各地に造られるようになって喜ばしい限りである。
2 第2日の出湯 (再訪)
蒲田近くの黒湯銭湯
やや濃い目の湯 カラン自在
透明度7センチ
蒲田の周辺には黒湯の温泉銭湯が数多かったが、年々減少して貴重なものになってきた。濃い黒湯の2ヶ所が無くなったのが痛い。辰巳天然温泉は枯渇し、女塚浴場は廃業した。わが自宅の近くで2ヶ所の温泉が無くなった。残る第2日の出湯は健在であった。
白湯の浴槽の片方に黒湯の温泉浴槽があり、カラン自在になっている。この湯も前記2ヶ所ほどではないが、やや濃い目で透明度7センチほどの黒湯である。黒褐色、少エグ味+苦味、わら臭と観察した。
銭湯は熱く沸かしているのでカランから源泉を出して弱い掛け流しにして入った。この時はうめても良いですかと聞くことを忘れてはならない。しかし最近は激熱の湯よりも適温のほうが歓迎されているようだ。今回もややヌル目まで源泉を入れた。
3 成城の湯温泉 スパ成城
重曹食塩泉 34.1度
掛け流し壷風呂あり
透明度7センチの黒湯
環状8号線沿いにある大きなビルの温泉センター、店舗と一緒になっている。34.1度の重曹食塩泉(Na-Cl,HCO3)で総計7467mgと等調性をやや下回っている濃さである。ここの温泉にも源泉掛け流し浴槽が一つだけあり、最近の温泉センターの良い傾向が出ている。
内湯と露天風呂は循環加熱であるが、露天壷風呂だけが源泉掛け流しである。食塩泉の黒湯で黒褐色、透明度7センチ、塩エグ味あり、アンモニア臭あり。と観察した。重曹分を含んでいるためと黒湯の有機物によってつるつるの感触があり好きである。アンモニアイオン(NH4)が45.4mgと多量に含有されている。
4 花小金井温泉 おふろの王様 花小金井店
食塩泉 4.8グラム 42.8度
加温掛け流し浴槽あり
香ばしいかつおぶし臭あり
小金井公園の近くにある日帰り温泉センター、和風平屋の瀟洒な施設である。おふろの王様チェーンで、この店舗はみな源泉掛け流し浴槽があり良いところが多い。
1500mの深さより掘削した食塩泉で総計4781mgの温泉で、42.8度が毎分255リットル湧出している。少量のモールを含有しており黒湯にはなっていないが紅茶色透明で美しい色である。王様の湯と命名された浴槽が掛け流しで弱く加温しているだけである。表面に気泡が浮いていて新鮮な感触がある。
入浴してみるとつるつるが強く良い湯であった。紅茶色透明、塩エグ味、少臭素臭+香ばしいかつお節臭で高い評価としたい。
5 府中駅前温泉 縄文の湯
食塩泉 7グラム 43.6度
つるつるの湯
内湯2ヶ所と露天風呂、循環が残念
府中の駅前のビルの中にある温泉。6階がエントランスで12階までを温泉センターで使っている。男湯は最上階で露天風呂からは周囲の景観が俯瞰できる。
43.6度の食塩泉(Na-Cl,)で総計6992mgである。もう一枚分析表がありこちらは重曹食塩泉(Na―Cl,HCO3)6144mgである。大きな内湯と露天風呂が1ヶ所ありどれも加温、循環、殺菌で残念である。
1ヶ所でも掛け流しの浴槽を造るとよいだろう。屋上には3ヶ所の貸切天空風呂がある。湯は紅茶色、透明度15センチ、塩甘味、わら臭ありと記録した。つるつるの湯で感触は良い。
1大井沢温泉 湯ったり館
月山を高速道路のような良い道で越えると寒河江川の沢に下ってくる。月山湖より朝日連峰のほうに遡ると大井沢の集落がある。この先は黒鴨温泉まで林道が続いているがこの雪では行けない。この奥の古寺鉱泉は雪で閉鎖であった。
大井沢に温泉が出来てから行ってないのでこのたび訪問した。簡素な木造の日帰り温泉で内湯だけの施設である。湯は38.2度の溶存12130mgの芒硝食塩泉で濃いものである。しかし加温、循環、殺菌で残念であった。
透明、塩味、無臭の個性の少ない湯になっていた。男湯は木の浴槽で気持ちが良いが源泉掛け流しにして欲しい温泉である。よわいつるつるがあった。
2寒河江花咲か温泉 ゆーチェリー
寒河江に素晴らしい温泉が湧出した。硫黄を含む食塩泉で私の好きな舟唄温泉に似ている泉質である。新しい温泉センターながら掛け流しで利用されており高い評価とした。
この源泉は花咲か温泉と命名されている。このほかに新寒河江源泉も使われておりこちらはモール系の単純泉ながら芳香と紅茶色の源泉で市民浴場でも使われている。
この源泉のほかに新たに掘削した源泉は花咲か源泉でこれが素晴らしい。59.4度の強食塩泉で総計23910mgである。HS2.1mg H2S1.9mg含有し、新鮮なので匂いと味覚に強い食塩泉ながら硫黄分の感触が良く残っている。
成分の骨格は土類食塩泉(NaCa-Cl)で苦味を持った強い塩味である。しかし硫黄のために薄く白濁し、湯からは濃厚な硫黄臭が漂っている。この少ない硫黄含有量にしては匂いがかなり多く新鮮さがわかった。
この薄白濁した花咲か源泉と紅茶色の新寒河江源泉が内湯に並んでおり、2色の温泉を楽しむことができる。新寒河江源泉も総計855mgの単純泉で50.7度と立派なものである。モール臭とも言える鉱物的な芳香があり赤褐色で存在感がある良い湯である。しかし花咲か源泉の素晴らしさに圧倒された温泉であった。
3舟唄温泉 柏陵荘
舟唄温泉は変っていた。1年以上前に、源泉が温度低下をして成分も薄くなったと電話で私に相談があったのだが、その時は配管の亀裂による差し水があるのではないかと推測し、調査をする必要があると答えておいた。しかしその後どのようになったかは知らなかった。
この度訪問すると06年の12月に新源泉を掘削して以前の源泉に代わって使われていた。成分的には強力で、60.6度の含硫黄土類強食塩泉で総計18200mgのものであった。
硫化水素イオン(HS)9.6mg 遊離硫化水素(H2S)10.9mgと総硫黄20mg近くの本格的な硫黄分である。カルシウムも多く塩苦味も以前の源泉に似ている。
しかし鉄分がなくなり黒く無くなってしまった。今回は薄緑色透明、強い塩苦味+たまご味、硫黄臭であった。この源泉は緑白濁から白濁するそうで、今回は新鮮で透明に近かった。
4べに花温泉 ひなの湯
山形空港から帰る最後に、べに花温泉に行った。大きな温泉センターで入浴料も250円と安い。山形県は全体に入浴料が安く、温泉センターでも300円が相場である。
湯は51.1度の食塩泉で総計2288mgの薄いものである。しかし湯の個性ははっきりとわかった。深緑色、少塩味、無臭である。源泉掛け流し浴槽があり高温湯となっている。
50度強の湯を掛け流しにしているので熱いのは当然である。薄いながら色と味覚に個性が現れている温泉で掛け流し浴槽もあるので良かった。
1かたくり温泉 ぼんぼ
小ぶりな温泉センター施設。35.9度の強食塩泉が湧出している。総計21140mgである。以前この温泉で身体に泡付きがあって高い評価をした。しかし今回は加熱されており泡付きはなかった。
しかし炭酸CO2を390.8mg含有しており炭酸の感触を残している。透明、塩味+少炭酸味、無臭である。
循環が残念である。強食塩泉ながら炭酸を含有している珍しい源泉で体感にも弱いが体感清涼感が感知できた。弱いつるつるもある強食塩泉には珍しい個性を持った源泉である。
2 湯の浜温泉 上区共同湯
湯の浜温泉は久しぶりで、ほとんど記憶から抜けてしまった温泉である。再訪した。下区共同湯はビルの1階で風情がないので、海岸近くの円形の展望台のような建築の上区共同湯に入浴した。
熱い湯が豪快に掛け流しされており、入浴するには熱すぎる。タイル貼りの半楕円形の浴槽1つのみで激熱なので少々加水した。
56.1度の土類食塩泉(NaCa-Cl)で蒸発残留物5985mgの弱食塩泉である。透明、弱い塩苦味、無臭のきれいな湯であった。豊富な湯量でよかった。
3湯田川温泉 湯どの庵泊
湯田川温泉の共同湯、正面湯の前にある和風旅館。以前からその奥まった瀟洒な玄関や風情のある建築を見て、宿泊したいと思っていた宿である。
このたび宿泊したが玄関周りの和風木造建築は食事処に改修されており、宿泊棟は奥のコンクリート建築であった。外観は純和風ながら客室はすべて洋室でそのほか廊下やロビーなどは和風である。
湯は湯田川1号泉の石膏芒硝泉(NaCa-SO4)で溶存1287mgの清澄な泉質である。透明、無味、無臭が掛け流しで利用されていた。
天井の高い共同湯のようなひのきの浴槽の浴室と、御影石の内湯の2ヶ所に浴室があり、20時で交代になるので両方入ることが出来た。
御影石のほうは露天風呂も付いており、この露天風呂の造りが竹の植え込みと渡り廊下の先にある浴槽のしつらえが絶妙で気に入った。
4湯田川温泉 正面湯共同湯
湯田川温泉で共同湯といえば正面湯である。湯量があって床に溢れ良い記憶になっている。このたび久しぶりに再訪した。
立派な瓦屋根の共同湯である。近くの商店で入浴料を払うと鍵を開けてくれる。水色のタイル貼りの清楚な浴室である。掛け流しの湯が溢れ床に薄く流れている。透明、無味、無臭のきれいな湯である。
石膏芒硝泉(NaCa-SO4)で蒸発残留物1200mgの単純泉に近いものである。しかし浴槽の大きさに適量が掛け流しされているだけというシンプルな使い方が良いのである。
5湯殿山温泉 湯殿山ホテル
湯殿山はご神体が温泉の湧出する岩で過去に行った事がある。素足になってお参りすることができる。しかし入浴出来ないので、この下にある湯殿山ホテルで同系の温泉に入浴できる。
以前入浴した時には赤い食塩泉で濃厚な印象があった。このたび再訪してみた。14.6度の土類食塩泉(NaCa-Cl)で溶存8565mgの源泉である。炭酸(CO2)717mg鉄(Fe)も12.5mg含有し分析表上では真っ赤に濁る塩味の温泉であるが、湯は透明、少塩味、無臭になっていた。
加水、除鉄、循環であろう。残念な使い方になってしまった。湯口の岩は昔の源泉を使っていたときのまま、赤褐色の析出物で固まり壮観であるが、湯は加工済みのものであった。
1肘折温泉 葉山館
肘折温泉は雪が深く11月とは思えない。石抱温泉に訪問しようとしたが積雪で行けなかった。温泉街の中の共同湯は3箇所ほど入浴済なので、今回は一番上流の葉山館に入浴した。
大正2年築の古い建築で重厚な瓦屋根の立派な外観である。玄関から地下に下ってゆくと浴室がある。73.5度の重曹食塩泉で炭酸を252mg含有している。
薄い赤褐色の良い湯で、エグ味と少炭酸味も感じられる。金気臭であった。掛け流しで利用されており好感した。床は薄い析出物で茶色に染まり風格が出ている。肘折の中でも個性的な源泉であった。
2黄金温泉 朝日館
黄金温泉の3軒の宿のうち小さな朝日館に入浴した。古い民家のような宿で浴室は1ヶ所だけの混浴である。59.4度の重曹食塩泉が湧出している。
赤褐色に濁り鉄鉱泉のような色である。炭酸味がして、少金気臭であった。総計3850mgの温泉で炭酸は57.5mgであるがよく残っており、味覚と体感に炭酸が感じられる。体感清涼感があった。
3長沼温泉 ぽっぽの湯
長沼温泉が改築されて始めて訪問した。ぽっぽの湯と言い、木造平屋の洋館のような造りの建築である。湯は32.2度の単純泉と70.4度の強食塩泉の2本が使われている。
強食塩泉は蒸発残留物25590mgの濃厚な温泉である。こちらは特に匂いと味覚が個性的である。
色も緑色透明である。味覚は強い塩味の中に油の刺激的な味があり摩訶不思議な味となっている。匂いは臭素と油臭が混合した特有の刺激臭がする。以前の古い共同湯では表面に油分が浮いていた。今回はそれはなかったが、強い個性は健在で良かった。
単純泉は薄褐色、無味、無臭で個性は少ない。露天風呂には強食塩泉の源泉掛け流し浴槽があり素晴らしい温泉であった。入浴後に身体に油と薬の混ざったような匂いが残り、強力な個性の湯である。
4やまぶし温泉 ゆぽか
大きなガラス張りの温泉センター。カルシウムの多い土類食塩泉(NaCa-Cl)の71.1度が湧出している。総計13910mgながらカルシウムの苦味で総量より塩辛く感じる。
加水掛け流しで浴槽内で循環している。透明、塩苦味、無臭と記録した。
5櫛引温泉 ゆータウン
赤い湯が掛け流しで利用されている温泉センター52.6度の源泉と59.6度の源泉の2枚の分析表が掲示されているが、52.6度のほうが鉄分を5.4mg含有し赤い湯になっている。
1階と2階に浴槽があるが1階が源泉掛け流しで2階は除鉄循環である。1階のほうが格段に良い。赤褐色濁り(15センチ)塩甘味、金気臭であった。
1瀬見温泉 喜至楼 泊
千人風呂が有名な喜至楼に泊まった。豪壮な入母屋造りの木造3階の本館の入り口から入ると、受付は裏の別館とのことである。
別館も木造3階建ての古い建築である。今日の部屋は3階の角部屋になった。一番の部屋だと思う。別室も付いた広い間取りでよかった。喜至楼は瀬見温泉の老舗で木造の大きな宿である。すぐ横が温泉神社でまさに湯元でしょう。前が共同湯である。
浴室は円形の大きな浴槽の千人風呂と小判型の小さめなあたたまり風呂と岩風呂がある。千人風呂は混浴である。玄関に付いたレリーフの意匠が古い様式を伝えている。
着物姿の女性がお辞儀をしているのと松の木が壁に透かし彫りになっている。また千人風呂入り口に白髪の老人と犬の彫刻があり、あたたまり風呂の入り口にも熊と金太郎が付いていて楽しい意匠である。
熱い湯で大きな円形のモザイクタイルの浴槽の底から湯が掛け流しになっている。浴槽では透明、無味、無臭の綺麗な湯であるが、庭先にある温泉神社前の源泉では透明、少エグ味、微硫黄臭の湯でやや個性があった。
2羽根沢温泉 紅葉館
羽根沢温泉は新庄の北部の山里にある温泉地。数軒の宿がある小さな温泉である。ここの湯が素晴らしい。含食塩重曹泉でつるつるの浴感が強く、国内でもベストテンに入ると思われる。
弱い油臭もあり個性的な温泉である。紅葉館に入浴した。同じ源泉ながら5階の展望風呂に掛け流しされている。透明、重曹たまご味、微硫黄臭と観察した。
つるつるはあるが以前の羽根沢の強さがない。分析表によるとCO3は31.1mgと一般的な数値であった。
含食塩重曹泉で溶存3848mgの温泉である。モザイクタイル貼りのひょうたん型の浴槽で源泉が弱く掛け流しで利用されていた。
3羽根沢温泉 加登屋
羽根沢でも老舗の加登屋にも寄ってみる。八角形の浴室に湯が掛け流しされており、新鮮で匂いがあった。
透明ささ濁り、重曹たまご味、油臭と観察した。湯量が多いのと、源泉から近いのが良いのであろう。
つるつるも紅葉館より強く良い温泉であった。食塩重曹泉の47.2度で溶存3848mgの源泉は同じである。
4戸沢温泉 ぽんぽ
過去に訪問してその特有の匂いが記憶に残っている温泉。つるつるも羽根沢に匹敵していて良い源泉である。
立派なコンクリート打ち放しの建築で立派な美術館のようである。エントランスに入るとワッフルスラブの天井で大空間になっている。
湯は64.2度の重曹食塩泉で総計6517mgと羽根沢より塩分が多くなっている。重曹と食塩が拮抗している泉質である。特に炭酸イオン(CO3)が142.5mgと国内屈指の量になっておりつるつるやや強しの良い感触である。
羽根沢の加登屋に匹敵している、つるつる度合いである。透明、塩エグ味、少油臭に特有の薬臭がある。個性的な源泉である。
中央部から掛け流しにして浴槽内で循環している、しかしほぼ掛け流しと言って良いであろう。温泉センター系にしては満足の行く温泉であった。