1 悪石島 湯泊温泉露天風呂1、2
海岸高台に2つの露天風呂がある。一つはカラであったがお願いして源泉を入れてもらう。湯口は炭酸臭となんと硫黄臭がある。
4日目にやっと中の島を脱出出来て、宝島行きの船で悪石島に行けた。中ノ島と同じような火山島で三角に尖った島である。宿は上集落にある民宿なかむら荘から温泉に近い浜集落の民宿浜辺に変更した。
温泉に近く便利である。海も見える宿で島の中心部よりも眺望も良い。さて温泉に早速行くが2ヶ所ある露天風呂のうち1ヶ所しか湯が溜まっていないとのことである。せっかく来たので両方に入浴したく思い、宿の人に温泉を管理する人を紹介してもらい湯を入れてもらった。
浴槽の清掃も手伝い湯を入れ始めた。これが海際の露天風呂である。4時間ほどで溜まるので夕方には入れるであろう。その間にすでに溜まっている陸側のもう一つの露天風呂に入浴した。
緑色白濁の湯で炭酸を含有しなんと土類重曹泉で長湯や妙見温泉のような泉質であった。なお硫黄分も含有しHS 0.2 S2O3 0.6 H2S 1.1mgで総計1.9mgの硫黄分である。
浴槽の角から豪快に源泉を入れており湯口に行くと炭酸臭と硫黄臭がはっきりとわかる。浴槽の縁は石積みでその湯の中の部分は赤褐色に染まり、掛け流しされている床も同様に染まっている。
島の温泉なので硫黄泉か酸性泉であると思っていたが、古い火山性の地層から湧出することの多い重炭酸土類炭酸系の温泉であったので驚いた。
54.5度の食塩土類重曹泉(NaMgCa-HCO3、Cl)である。炭酸分も752mgも含有している。緑褐色濁り、少炭酸味+エグ味、硫黄臭+金気臭と観察した。
陸側の露天風呂からも海の展望が良く景観、泉質、温度ともに快適で良い露天風呂であった。湯の調節機能もないのであろう、源泉パイプからそのまま掛け流しである。
夕方になって海側の露天風呂にも湯が溜まったとのことの報告を受けて入浴しに行った。上の露天風呂とほぼ同じ感触で緑色濁り、エグ味+渋味、土類臭+微硫黄臭であった。
こちらの方が海の景観が良く絶景である。またマグネシウムの成分であろうか?表面に薄い膜が張ったようになっていた。
こちらの浴槽は大きな岩積みで浴槽内部は赤く染まり雰囲気がある。湯を流して入れている岩は全体が赤く染まり土類重曹泉特有の析出物が付いていた。海の眺めも180度以上で波打ち際も近い良い露天風呂であった。こちらにも入浴できて満足至極である。
2 悪石島 湯泊温泉 内湯共同湯
ここの湯は土類重曹泉であった。NaMgCa-HCO3・Cl 54.5度 総計2038mg CO2 752.5mg なんと炭酸泉に近い長湯のような泉質 緑白濁、エグ味+渋味+少炭酸味、少硫黄臭+土類臭 炭酸の感触多し
悪石島には内湯の共同湯もある。露天風呂と同じ源泉だと思われる。コンクリートの平屋の建築で分析表が掲示してあった。濃い褐色に染まったタイル浴槽で年季を感じさせる。その浴槽に緑色の湯が掛け流され良い共同湯である。
緑白濁、エグ味+渋味+少炭酸味、少硫黄臭+土類臭であった。源泉コックから湯が入れ放しになっており、入浴すると浴槽の縁から湯が溢れる。温度が54.5度あるのでなにも加工していないでただ掛け流しにしているだけであろう、温泉とはこのような原始的な状況が一番良い。
2つの露天風呂と共に悪石島の硫黄山からの温泉が利用されている。好きな泉質でもあり満足した。
3 悪石島 海中温泉
浴槽部分に大石がごろごろしていて、入浴できない。波打ち際にて入浴 ヌル湯
湯泊温泉に行く途中の海岸に温泉マークの書かれた岩があり、波打ち際に温泉が湧出している。しかし浴槽のようになった窪みが見当たらず、ただの海岸である。
50センチから1メートルほどの大きな石が転がっている海岸で、人の力では石を移動させることは無理である。温泉マークの岩はほぼ波打ち際にあるが浴槽として入浴できる場所がない。しかし大きな岩の間より温泉が湧出し、岩の間から深い底にある水面に手を伸ばして入れると、暖かい温泉が湧出している。一番暖かくなっている波打ち際にて、尻だけ入れるような湯溜りを探して入浴した。
大きな波が来ると海水と同じ温度になってしまうが、また底から湯が湧いてきてヌル目の海水になる。泉質は湯泊と同じような土類重曹泉であろうが、海水とまざり薄目の食塩泉のような感触になっている。海水と混じる地点であるためである。以前は温泉マークの大岩の手前に浴槽風に深く湯溜りがあったそうであるが、台風で大石が埋まり、ほぼ平坦な海岸になってしまったとのことである。
重機などで浴槽を掘り起こすことをせずに今に至っているので、ほぼ海中温泉には入浴できなくなっていた。残念ながら波打ち際のヌル目の温泉と海水が混じる地点での入浴がやっとできる状況であった。近くに湯泊温泉もあるので放置されているのである。しかし島のパンフレットにも大きく写真付きで紹介されているので早急な改善を希望したい。
4 悪石島 砂蒸し温泉
崖に小屋掛けした砂場。明礬が多量に析出している。
硫黄山の草木の生えていないガレ場に砂蒸し風呂があり、トカラを紹介する各書で紹介されている温泉。ガレ場の最も上からは少量の噴気も出ているが、それほど活気のある噴気地帯ではない。
砂蒸し風呂の地点には小屋掛けされており、その外観の風情が良い。石積みの腰壁の上に木の柱と屋根が掛けてあり吹き放しの空間である。屋根は白い塩ビ波板である。この簡素な施設が良い情緒を醸し出していた。中は公園の砂場のように一面の砂地である。しかし山側の擁壁近くの砂の表面に霜のような明礬の析出が多量に噴き出しており別府の明礬小屋の床のように黄色い表面に白い霜柱のような明礬が多量に溜まっていた。
砂を掛ける入浴法ではなく、暖かい床に寝そべるのである。しかし温度があまり高くないので長い時間入浴できる。私は自分の身体の部分だけ深く掘り窪地を作り、底に毛布を敷いて寝そべった。深く掘るとかなり熱いが10センチほどであれば適温で、ややヌルい温度である。
本でも読みながら長時間過ごすことができる。しかしブヨが多く、そのときはあまり気にならないが、翌日体中に虫刺されが出来ていて痒かった。殺虫剤が必要であろう。まあ名物の砂蒸し温泉を体験できたと言う喜びが一番であろう。別府や指宿の砂に埋まるほうがずっと快適である。
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1 中之島 天泊温泉
古いコンクリート造りの湯小屋 ささ濁り 少酸味+硫酸塩薬味、微硫黄臭 明礬泉と思われる。
中の島の中では一番鄙びた温泉浴場。コンクリートの古い湯小屋で外観は黒ずんでいる。褐色に染まった古いタイル貼りの浴槽が2つあり壁は黒く変色したコンクリートである。ここの湯は東区、西区共同湯のような白濁した湯ではなく薄白濁ささ濁りの明礬系の湯であった。
微白濁ささ濁り、少酸味+硫酸塩薬味、微硫黄臭と観察した。土類硫酸塩系か明礬系だと思われる。海に近いが塩分はない温泉である。以前は横に小さな渓流があり、足元湧出の露天風呂だったそうであるが、現在の湯小屋を見ても30年は経過しているような外観なので、その話は相当昔のことであろう。
東区>西区>天泊の順に塩分が薄くなっている。天泊温泉では見方によっては緑色にも見え、土類泉のようにも思える。分析表がなかったのではっきりした泉質は不明である。しかし鄙びた共同湯で男女別ではなく一つの浴室の簡素な温泉であった。
2 中之島 東区下海岸野湯
海岸に自噴している源泉発見 東区と同系の硫黄泉 塩気は6グラムほど。たくさんの入浴スポットあり。
東区共同湯の海岸は防波堤の内側にあり、波が直接当たらないので格好な湯溜まりがある。この海岸には湯が自噴しており、熱いところからヌル目のところまで、100メートルほどの海岸一帯が温泉浴場になっている。海の大露天風呂とも言えるであろう。港側の海岸は海の水と同じ温度であるが、東区共同湯に近づくにつれてだんだん温度が上がり、塩分も少なくなってくる。
共同湯の下付近からさらに東側が温泉湧出地帯で湯温も高くなり大量に湧出している付近は熱くて入浴不能になる。しかし少し離れて温泉を掻き回すことにより熱め適温の湯になる。極めて新鮮なために硫黄分が析出しておらずまだ白濁していない。透明である。一部の石に白い湯の花が付着している程度である。透明、たまご味、硫黄臭という東区共同湯と同じ泉質であった。
底が砂地の海岸は足元の砂より「もわもわ」と湯が湧出しており素晴らしい。また石の多い海岸は石の間より熱い温泉が湧出しかなり熱い。5から6グラムの塩分量で明らかに海水よりも薄い。この海岸は温泉で満たされていると言ってよいであろう。深さもあり、温度も適温なので入浴が快適である。有名な悪石島の海中温泉よりもずっと素晴らしく良い温泉であった。