1けやき平温泉 猿飛山荘
簡素な露天風呂、渓流の眺めあり 祖母谷の引き湯 透明、少たまご味、硫黄臭あり 白い湯の華浮遊
13日の朝は阿曽原温泉小屋を5時発とした。水平歩道までの急な登りを越え、折尾谷、志合谷を過ぎて蜆谷あたりから下りになる。しかし右足が痛みを発して曲がらなくなった。私は左足が弱いので右足にいままでほとんどの負荷を掛けていたのであろう、ついに曲げると強い痛みが出てしまった。しかしけやき平駅の放送も聞こえるほどに近くになっている。こんどは左足にほとんど任せて下ってきた。
けやき平の駅に着いたのは9時をすこし過ぎた頃であった。約4時間で帰り着いた。行きの5時間は掛からなかったが辛い行程であった。水平歩道の高度感にも慣れたがそういうときが危険なのであろう。気を抜かずに歩いた。
けやき平の周辺には祖母谷に強力な源泉があり祖母谷、名剣、猿飛の3ヶ所の温泉がある。けやき平駅のすぐ近くには祖母谷温泉の引き湯であるが猿飛山荘に温泉がありこの度入浴してみた。渓谷を望む露天風呂でいままでシャンプーがなかったのでここで頭を洗い爽快になる。
そして右足を温泉で暖め、冷水で冷やす方法を繰り返すと痛みが引いていった。軽症だったのである。湯
は単純硫黄泉で透明ながら白い湯の華が浮遊している、弱いたまご味で、硫黄臭があった。引き湯ながら80度近い高温なので加水であるが硫黄泉の個性は残存していた。簡素な露天風呂のみの施設で川の流れが俯瞰できる。小さな宿であった。
2祖母谷温泉 渓流の野湯 再訪
河原のそちこちに激熱の源泉湧出 流れ落ちるところで川水と混ぜて入浴 単純硫黄泉 透明、少たまご味、焦げ硫黄臭あり 新鮮すぎて硫黄分の個性は少ない。
けやき平から徒歩で40分ほどの奥に祖母谷温泉がある。ここには川沿いに源泉湧出地
獄があり、川水と混ぜて入浴できる。以前行ったときは、広い河原の広範囲に渡って源泉が湧出していた。湧出地点がボッケのようになり川の小さな流れと合わさり各所で入浴できた。
しかし今回は川が太く1本になっており、各所から湧いた温泉が熱いまま川に流れ込む形になっていた。84度とのことで熱くて手も入れられない。川と混ざる地点に適度な浴槽風の囲いが出来ており、そこで湯を攪拌しながら入浴した。
きれいな湯であるが硫黄分を含有し単純硫黄泉である。しかし新鮮なので一切濁っておらず透明な湯が流れていた。しかし匂いは焦げ硫黄臭がある良いものであった。含むとまったりとしたたまご味も感知できる。湧出地点の石には白い硫黄華が少量付着しており硫黄泉であることがわかる。一番大きな源泉は池のようになっていた。
底は硫化鉄の成分があるのか、真っ黒な砂になっている。しかし激熱でただ眺めるだけである。川の脇に湧出する小さな流れでも充分な熱さになる。また足元からも湧出しており、尻を付けていると非常に熱い。また湯の表面は攪拌しないとすぐ激熱になってしまう。上下から温泉の熱が来るので忙しい入浴になった。しかしこの自噴源泉は貴重な天然資源であろう、川の水と半々に入れないと入浴できないが、自然のままの温泉に入浴できて満足である。
3祖母谷温泉 祖母谷小屋 再訪
コンクリートの内湯 大きなコンクリートの露天風呂 83.1度の単純硫黄泉 透明白湯の花浮遊あり、無味、湯口硫黄臭
祖母谷温泉小屋には以前このトロッコ周辺の温泉巡りをしたときに泊まったことがある。けやき平より奥鐘橋を渡り大きく岩がオーバーハングして上部に迫り出している人食い岩を過ぎて歩いてゆく。長めのトンネルを抜けると急な渓谷であった沢は大きく広がり祖母谷と祖父谷の合流地点になる。その対岸に小さな山小屋が見える。40分ほどの歩きである。
コンクリートの露天風呂が一つだけの簡素な温泉であったが、今回はコンクリートの小さな内湯と女性用の露天風呂と大きな男性用露天風呂の3箇所の浴槽があった。毎分400リットルの単純硫黄泉で83.1度である。
加水掛け流しで使われている。透明、無味、湯口硫黄臭あり、であるが白い湯の華が多量に浮遊してい
る。しかし匂いは少なく硫黄臭はかなり減少しており加水が多いと思われる。
しかし川を眺める露天風呂は気持ち良く源泉地獄ではゆっくりと入れないのでここでゆっくり入浴できるのでよしとした。
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1 仙人湯温泉 後立山連峰が見える絶景の露天風呂 小さな屋根付きの内湯はジモ専風 単純硫黄泉 透明、微酸味、湯口少硫黄臭
仙人湯遠景
仙人湯に行くには、阿曽原温泉小屋から2時間半の急登のはずであった。ここから仙人湯を往復してけやき平に戻る予定であったがこのコースは通行止めになっていた。驚いたが仕方がない。雪渓が崩落して道が寸断しているとのことである。予定を変更して翌日は仙人湯往復だけになりそうだ。まず登りであるが、仙人ダムまで水平歩道を行き、そこから尾根を急登するコースが今年から開削されていた。
源泉地帯
仙人湯まで登り5時間である。下りは同じ道で3時間半とのことである。8時間半を要するコースになっていた。ここまで来たら行くしかない。早朝に出て、なるべく早く阿曽原小屋まで戻り、水平歩道をけやき平まで下れるかどうか、体調で判断しようということにした。山の朝は早い、4時起床で4時半出発であれば8時間半のコースに入浴時間1時間を見て9時間半の時間がかかるので、14時に帰り着くことになる。やはりこの阿曽原温泉小屋にもう1泊であろう。
予定通り4時半に阿曽原を出発して水平歩道まで急斜面を登る。まだ足元は暗い。ようよう明るくなり5時半に仙人ダムの地点に到着した。そこから鼻が付きそうなくらいの急斜面の登りである。至るところにはしごやチェーン、ザイルが張ってある。飽きずに登るしかない。朝で気温もまだあまり高くなっていなかったのも幸いして7時に約1400メートル地点で朝弁当を食べた。尾根に出るとさすがに北アルプスの一角である。後立山の稜線が見えてきた。白馬岳から鑓ガ岳、唐松岳、鹿島槍ガ岳、爺ガ岳まで一望に眺められる。ところどころに残雪も見える。
急な登りだが景観は美しい。7時半にやっと1629メートルピークに達し、あとは仙人湯の源泉の前を巻いて仙人湯小屋までのトラバースルートである。8時丁度に仙人温泉小屋に到着した。荷物を大幅に減らし阿曽原に置いてきたので3時間半で登ることができた。早い到着時間になって良かった。源泉のところは湯の川が流れている。かなり高温で熱い湯である。
少量飲んでみるとやや酸味を感じた。岩が赤銅色に染まっているので明礬系の単純泉であろう。仙人温泉小屋には露天風呂と屋根付きの浴槽の2箇所あり両方ともなかなか良かった。露天風呂は絶景の大展望である。前記の後立山連峰が浴槽からすべて見える。
湯は単純泉だろうが仄かな個性もある。透明、少明礬酸味、噴気臭ありと記録した。もう一つの屋根のある湯小屋の風情が良い、天然岩の浴槽にバラックのような簡素な屋根が掛かり、地元専用共同湯か個人宅温泉のようである。この湯も熱いので少量加水していた。しかし遥かに遠い山の湯で景観も良く素晴らしい温泉である。
江戸時代の昔から利用されていたらしく、剣岳の裏の稜線を越えてやってきたということである。約1時間の入浴の後9時に来た道を戻る。下りは急でまっ逆さまに落ちる感じである。ザイルや鎖につかまり上半身の筋肉もなるべく使うと足の負担が少ない。一心不乱に下る。阿曽原温泉小屋に12時に着いた。3時間の下りで合計2時間の短縮であった。しかしこの後に水平歩道を5時間歩くのは7時間近くの歩きをしてきたので、明日にすることとした。
昼から山小屋に滞在してゆっくりとした時間を過ごした。昼寝をしたり、阿曽原温泉にも入浴しに行った。山小屋はまた同じ部屋であった。
2 仙人ダム温泉 関西電力寮の浴室、特別許可 透明、無味、無臭 掛け流し 地熱のあるトンネルより引き湯
仙人湯からの仙人ダムに下ると、関西電力の寮が2棟建っている。そのうちの一つは外から見ても温泉とわかる浴室があり、きっと温泉であろうと推測した。帰りにお願いして入浴させていただいた。この地区の関西電力の施設は閉鎖的な状況で、「許可を取ってきたか?」とか、「一般は入室不可である」とのことである。やや粘った末に許可が出た。
この温泉こそが高熱隧道からの温泉を利用している。登山道も一部ダム付近は隧道に入るが中からサウナのような高温の熱気が出ており温泉源泉として充分である。この寮に貯湯槽から引いている図面があった。きれいな湯で個性のほとんどない透明、無味、無臭の湯である。浴槽から床一杯に湯が掛け流しで利用されていた。
唯一の個性は弱いがつるつるの感触があった。タイル貼りのきれいな浴室であった。
1 阿曽原温泉 四角い露天風呂1つのみ 湯量豊富、少加水あり 単純泉 透明、無味、湯口噴気臭
念願の阿曽原温泉、仙人温泉に行った。宇奈月からけやき平までのトロッコの走っている区間にあるいくつかの温泉、黒薙、鐘釣、祖母谷などの温泉群はかつて入湯したことがあるが、そこから登山道を奥に歩いてゆく阿曽原と仙人温泉は以前からの課題になっていた。
2007年の夏にトロッコ周辺の再訪も合わせて、行くこととした。けやき平から阿曽原に向かう水平歩道は高さ200メートル以上の絶壁が続き、単独行は危険だと考え同行者を探していた。このたび8月のお盆の連休に都合が合った。7月16日に起こった中越沖地震の影響で北陸本線の夜行列車が運休になっており、初日の宇奈月発7時32分に乗車するには前日の夜に富山入りしておかなくてはならない。寝台列車の北陸号に乗りたかったが飛行機で行くこととした。羽田20時発のANA便で富山空港に21時に到着し、宇奈月に直行できる魚津に泊まることとした。魚津は特急列車も停まる駅であるが、駅前は閑散としている。駅前のアパホテルに泊まった。
11日の6時始発の富山地方鉄道で宇奈月に向かうと、けやき平行きの始発7時32分に間に合う。今年の8月は猛暑で東京では熱い日々であったが富山空港に降り立ってみるとこちらも東京と同じほどの熱い気温であった。7時32分に無事トロッコ列車に乗りけやき平に8時47分に到着した。ここから阿曽原温泉まで絶壁が連続する水平歩道でコースタイム5時間である。途中、昼食があるので6時間と見ると、9時発15時阿曽原着である。
1日目のコースは危険な崖が多いので慎重に行かなければならない。けやき平を出ると、斜め後ろに戻るように急勾配を登ってゆく。約300メートルの高低差を水平歩道まで登るのである。最初から汗だくになりながら登った。6月から続けている8階のオフィスまでの階段登りをしていたので、コースタイム通り急斜面と尾根を突破し水平歩道に入った。
この水平歩道は断崖をコの字型にえぐったもので登り下りは少ないが、常に危険と直面している。最初に蜆谷という沢に出たところで10時半であった。次の志合谷は長さ150メートルの真っ暗なトンネルで抜ける。ヘッドランプを出して進む。ここが11時15分である。山ながら気温は高く、トンネルの中に入ると冷蔵庫のように涼しい。足元には冷たい水が流れている。この志合谷で高熱隧道の工事の際に宿舎が雪崩で全壊し100人近くの人が亡くなったところである。
行く前に吉村昭の「高熱隧道」を読んでいたので、ここの怖さは分かっていた。しかし今は夏であり、水平歩道も整備されている。注意を怠らなければ良い。志合谷を越えると阿曽原までの水平歩道でのハイライト「大太鼓」の難所である。対岸には「黒部の怪人」と呼ばれる奥鐘山の大岸壁が迫り、こちらも垂直の岩肌になる。そこをコの字型にえぐった道が続いており、大太鼓のあたりは道幅も狭くなり危険である。山側に一本の
番線が這わしてあり、それに掴まりながら進んだ。
次の沢が折尾谷でここで昼食を取った。食後12時半に出発して1時間ほどで水平歩道から別れ阿曽原温泉に下ってゆく。すこしバテ気味であったが14時に阿曽原温泉小屋に到着した。プレハブの小屋でコンクリートの台のような基礎の上に比較的大きな小屋が建っていた。
冬には解体して収納してしまうので簡素な造りである。内装も天井もない。窓も開け放しでただ雨露を防ぐだけのものだ。しかし小屋には電気がありビールが冷えており、長い水平歩道の緊張を解くのには最高である。そして温泉は小屋から10分ほどの下った地点にある。階段を下って行くので、帰りにまた汗をかいてしまうのが難点である。明るいうちに入浴しに行った。
入り口からもうもうと湯煙を立てているトンネルの前に四角い露天風呂の浴槽があるだけである。トンネルの中は40センチほどの高さの堤防があり、その奥は湯の池になっている。そこから黒いホースで露天風呂に源泉を入れているだけの簡単な仕組みの温泉であった。湯量があり使いきれずに溢れた湯は側溝を流れて捨てられている。60度以上の単純泉であろう。きれいな湯であった。
透明、無味、湯口噴気臭という温泉であった。熱いので加水して適温にしているが、夏の熱い時期には加水も致し方ないであろう。適温の温泉に入り、その後この冷たい水を浴びると爽快である。この繰り返しをした。夜に再度入浴した同行者の話だと加水が少なく激熱になっていたとのことである。小屋からはトンネルからの噴気が常に見えて温泉らしい雰囲気があった。お盆の休みの最中ながら個室で利用でき、静かな山小屋であった。
1 半出来温泉 登喜和荘 3回目
総計4960mgの土類食塩泉 木の内湯と混浴の露天風呂 樽風呂は健在 掛け流し
翌日は天気であったが、香草温泉は昨日の雨で増水しているであろうと理由を付けて、軟弱にも香草行きの山登りを取りやめ、周囲の温泉めぐりとした。まず長野原と万座鹿沢口の間にある半出来温泉に行く。もう10年以上も昔の著書、「日本全国マル秘湯」に紹介してから久しぶりの訪問である。
木の内湯と離れになった混浴の露天風呂が今も同じく健在であった。42.5度の土類食塩泉(NaCa-Cl)で総計4960mgの温泉である。内湯は木の浴槽にパイプから湯が掛け流しになっている。薄くささにごりで、塩苦味、無臭である。味覚に湯の個性が出ていた。
露天風呂は小さな樽にまず湯を入れそこのオーバーフローが次の樽に入り、そして露天風呂の浴槽に注がれる仕組みで、源泉温度が低いので一つの湯を小さな樽から大きな浴槽に順に流すことによってヌル湯と適温浴槽とに分けて使っている。変らずにひっそりと存在する小さな温泉宿であった。
2 平治温泉 土類重曹泉? 再訪
浴槽であればさらに良い 浴槽はカラ 源泉下の溢れ湯を滝のように打たれる
平治温泉にも再訪した。冬には国道からも見えるが、夏は周囲に草が生えていて見逃し、2度ほど往復してやっと見つけた。湯小屋は以前のまま白い小さな小屋で健在であった。しかし湯がカラであった。残念至極である。
しかし源泉はあるだろうと周囲を探すとやや下ったところに源泉があり、豊富に溢れて小川になって流れていた。これは入浴できないのがさらに残念である。さらに下ると湯が300φほどの塩ビパイプから豪快に落下して打たせ湯のようになっていた。すかさずここで浴びてみた。
透明、少エグ味、少金気臭である。土類重曹泉であろうか?浴槽に入っていると泡付きのある新鮮な湯であるが打たせ湯でも源泉直接の新鮮さである。楽しい体験となった。
3 渋沢温泉 再訪
単純泉 透明、少たまご味、少金気臭 加熱掛け流し
鳥居峠を越えて上田に下る道の途中にある温泉。国道脇にあり、以前オープン直後に入浴しているが、その後何度も通過してしていた。この度久しぶりに訪問してみた。今回の温泉めぐりはほとんどの宿が千円から八百円ほどの入浴料で高くついたがここは300円で安かった。以前の記憶だと泡付きのある褐色の濁り湯であったが、色は透明になり、少たまご味の少金気臭の温泉であった。
御影石の床と天然石の浴槽の内湯が1つのみの簡素な施設であった。外観も改修され黄色い目立つ色になっていた。42.4度の単純泉で炭酸を178mg含有し以前泡が付いたのはこの炭酸であろう。今回は弱く加熱して掛け流ししており、泡付きは見られなかった。ずいぶん普通の湯になってしまっている。やはり温泉は湧出直後の湯が良いと思った。
4 角間温泉 岩屋館 再訪
重曹食塩泉 49度 炭酸含有573mgで湯口より気体として出ている。凄い炭酸臭 炭酸よく残る
角間温泉の湯が良くなったと聞いて訪問してみた。以前はクリアーな炭酸鉄鉱泉であったが、温度のある重曹食塩泉(Na―HCO3、Cl)になり49度の高温になった。鉄分を16mgと炭酸を573mg含有し素晴らしい個性になっていた。
湯は温度が高いために源泉湯口で炭酸が気化しており湯口が湯の中にあるのでボコボコと炭酸が気化しており、刺激的な炭酸の匂いが充満している。湯はオレンジ色に濁り、渋味と塩味があり素晴らしい存在感である。
日帰り入浴では内湯しか入浴できないが、特にお願いして露天風呂も入浴させてもらった。CO2の573は温度の割りに良く残っており炭酸味も良く分かる。匂いが強烈で炭酸刺激臭と鉄分の金気臭が良く匂う。総計6408mgと食塩と重曹も含有量が多く立派な良い温泉であった。
渓谷の中にある宿で頭上に大きな岩壁が覆いかぶさっている。露天風呂は離れになった混浴で庭園風のしつらえである。赤褐色の濁り湯でこちらも源泉から炭酸が噴出している。炭酸刺激臭も多く内湯だと危険な感じである。良い湯になった温泉であった。なおこの岩屋館の奥に同系の泉質の野湯があると聞いたが、ご存知の方はおりますか?