1奥の院地獄
野湯 高温の川、土砂崩れで泥湯になっている。アイボリー白濁、酸味、硫黄臭
奥の院の沢は、驚くことに車道に至る地点ですでに適温の湯の流れである。入浴スポットを探し登ってゆくと湯はかなり高温になってきた。43度ほどあるであろう。先日の地震の影響か?途中に大きな崩落地点があり、大木が倒れており、土石流の跡とも思える凄惨な状況であった。
しかし泥が大量に溜まった底に湯が流れアイボリー色の湯であった。酸味は片山地獄と荒湯地獄の中間ほどの酸味で、硫黄臭は少ない。奥には壮大に上がっている噴気地点が見える。しかしそこまでは行かずに手前で入浴した。これ以上登ると高温で入浴不能になると考え、土石流の地点であった。熱い湯がこれほど流れているのは凄いことだと思う。
2中山平温泉 丸進別館 (再訪)CO3 166mg 薄白濁、苦エグ味、土(墨)の香り.つるつる最も強し 斜めの浴室 現在休業中
中山平温泉は才色兼備の素晴らしい温泉である。つるつるの入浴感触と多量に含有された硫黄分、高温の源泉、渓谷と山の美しい風景。噴気が所々に噴出し温泉情緒を高めている。日本を代表する良い温泉である。丸進別館は小さな宿で最近は土日しか営業していない。宿泊は止めてしまったようだ。なお現在は休業中である。
残念である。ここの浴室が不思議で、全体に傾いており、ドアが斜めに付いている。湯が溢れると上に向かって流れるような不思議な空間である。湯は100度の含硫黄芒硝重曹泉(S-Na-HCO3,SO4)で総計1198mgの源泉である。分析値を見て驚いた、以前の記録であった炭酸イオン(CO3)の含有量がさらに増して166mgとなっていた。硫化水素イオン(HS)も32mgと多い。
遊離硫化水素(H2S)も1.1mg含有し湯の色は薄白濁している。苦エグ味、墨(土)の香りであった。入浴するとつるつるの感触を超えてヌルヌルである。中山平で最強のつるつる度であった。匂いが硫黄臭ではなく墨のような匂いで変わり種である。厚い湯が少量掛け流しされていた。
3中山平温泉 レストハウス星沼 (再訪)透明、たまご味、少硫黄臭 つるつる強し 綺麗な湯
国道沿いにあるレストハウス星沼は健在であった。星沼山荘とも書かれている。宿の奥に簡素なコンクリート造りの浴槽が男女1つずつある。湯が良い。含硫黄重曹泉で1号源泉と3号源泉の2枚の分析表があり98度と98.2度である。ともに炭酸イオンが主成分でCO3 134.7mg 153.7mgと多量に含有されている。
硫黄分はHSの23.3mgとS2O3の1.1mg 3.5mgである。透明、たまご味、少硫黄臭である。こちらでは丸進別館とは違い正統派の硫黄臭がした。つるつるも強く気持ちの良い入浴感である。湯は新鮮なためか白濁や緑がかっておらず綺麗な透明である。中山平温泉の特徴を良く出した湯であった。
4中山平温泉 鳴子ラドン温泉(休業中)
HS 37 S2O3 5.6 H2S 2.1 美しい緑色透明、少エグ味、少硫黄臭 つるつるあり、東蛇の湯と同じ源泉 3.11の地震の影響で休業中である。
何度か訪問した東蛇の湯と同じ経営のラドン温泉に行った。自炊棟が東蛇の湯でラドン温泉は旅館部である。鉄筋のホテルであった。内湯と露天風呂は離れてある。湯は総計1137mgの含硫黄―芒硝重曹泉で100度である。HS 37.3mgと多く、CO3は44.9mgと少ない。東蛇の湯と同じ源泉である。内湯は薄緑色で露天風呂は濃い緑色で美しかった。
つるつるは前の2つに比べると少なくつるつる程度であった。以前東蛇の湯に入浴した時の記憶では猛烈なつるつるであったので使い方の違いであろうと推測した。女湯は内湯が白濁していたと聞いた。温泉は使い方でずいぶん変ってしまうものだと感じた。内湯は源泉追加しながら浴槽内部で循環されており熱い湯を冷ますためだと思われる。露天風呂は弱く掛け流しされていた。
5吹上温泉 峯雲閣 (再訪)泊 食塩泉 透明、無味、湯口微硫黄臭 木造全8室の小さな宿 渓流に面する混浴大露天風呂あり
吹上温泉は川の両側より温泉が流れ込み野湯の川に入浴できる温泉である。むらさき地獄という源泉は噴出泉で壮観である。その吹上温泉で1軒の宿。以前訪問して玄関の豪快な吹き抜けと古い民家の造りが記憶に残っていて宿泊した。
前に流れる川は紫地獄からの湯が合流して温かく、入浴可能であるが今回は雨で増水していて冷たかった。湯は92.2度の食塩泉で総計1086mgの清澄な温泉である。透明、無味、湯口微硫黄臭というものであった。木造の全8室の小さな宿で内湯と混浴の大露天風呂がある。ともに掛け流しで利用されている。
6吹上温泉 間欠泉の湯
大きな露天風呂、間欠泉の湯を入れている。透明、無味、無臭 弱食塩泉か?
朝一番で吹上温泉の天然記念物の間欠泉を見学に行く。庭に露天風呂があり、噴出を待つ間に入浴した。大きな混浴の露天風呂だけの施設である。間欠泉の湯を溜めておきそれを掛け流しで注いでいる。
プールのような大きな浴槽だが熱い湯なので湯口に近づくとかなり高温になる。湯は峯雲閣と同系の食塩泉または単純泉であろう透明、無味、無臭であった。川に沿った露天風呂で風情は良く造られていた。入浴後に丁度、間欠泉の噴出が始まり見ることができた。
7神滝温泉 (再訪)
古い木造宿 金気のある食塩泉 古びたコンクリート浴槽
神滝温泉は以前のままの鄙びた宿で存在していた。煮締めたように茶色に変色した外壁の板が古さを物語っている。しかし2階と浴室の窓はアルミに変えられていた。障子で廊下と区切られた部屋の前を通り浴室に行く。温泉で変色した浴槽は四角いものが一つで男女混浴である。
64.4度の食塩泉で総計1917mgの温泉である。鉄(Fe)を1.7mg含有し鉄渋味と金気臭が感知できた。湯は湯口の栓を抜くと豪快に掛け流しになる。透明、少塩味、鉄渋味、少金気臭と観察した。古い木造宿で鳴子屈指の鄙びた温泉宿であろう。
8鳴子温泉 農民の家 (再訪)
4本の源泉あり、硫黄泉がメイン、炭酸泉はCO2 433.7mgで規定に入っていない 炭酸分抜けていた。
鉄筋の大きなホテル、浴室が4ヵ所にあり、それぞれ違う源泉で温泉好きにははずせない宿である。農民の家という名前の通り、外観から見たホテルというよりも、大きな湯治宿である。人気があるのか混雑している。硫黄泉3本と炭酸泉がある。大浴場は男女別で79.2度の3号泉が使われている。HS 44.6mg S2O3 0.7mg H2S 10.1mgである。白濁(20センチ)、硫黄の甘苦味、焦げた硫黄臭多しであった。
分析表とおりかなりの硫黄泉で立派な源泉である。炭酸泉は33.1度の4号泉で CO2 433.7mgであるが炭酸分は抜けてしまっており透明、エグ味、少金気臭のヌル湯であった。源泉のまま掛け流しにされているが炭酸分が無いのは泉脈が変ったと思われる。混浴の浴室である。もう一つの混浴の硫黄泉浴場がある。64.2度の1号泉でHS 10.8mg S2O3 3.1mg H2S 47.6mgという硫化水素型である。
白濁(18センチ)、硫黄苦味強し、硫黄臭少ない、と観察した。大浴場より白濁が濃い湯であった。もう一つのやすらぎの湯浴場という浴室は74度の2号泉でHS 4.5mg H2S 20.6mgの源泉であるが男湯は透明、硫黄甘味、少硫黄臭であった。硫黄泉ながらここだけ透明であった。4ヶ所の源泉に入れる温泉パラダイスである。
9鳴子温泉 姥の湯 (再訪)
4本の源泉 硫黄泉、単純泉、芒硝泉、重曹泉
姥の湯も4本の源泉があり44.2度の単純泉、54.2度の芒硝重曹泉、60度の土類芒硝泉、63.5度の硫黄泉の4本である。木造2階建ての大きな民家風の施設である。芒硝重曹泉は露天風呂に使われており、透明、エグ味、少湯の香である。つるつるの感触があった。
タイル貼りの内湯が土類芒硝泉で透明、無味、湯口微硫黄臭であった。硫黄泉は木造の湯小屋で雰囲気が良い。木の浴槽で真っ白な湯が入っていた。HS 2.1mg H2S 1.8mgとは思えない硫黄分で白濁、硫黄甘味、焦げ硫黄臭であった。
10鳴子温泉 東多賀の湯 (再訪)
45度の硫黄泉掛け流し、真っ白な湯 HS 31.2 H2S 2.1 CO2 481
鳴子駅の下側の国道沿いにある温泉宿。西多賀の湯と隣り合っている。45度の含硫黄石膏芒硝泉(S―NaCa-SO4)でHS 31.2mg S2O3 0.3mg H2S 1.1mgという硫黄型である。緑色になりそうだが温泉の不思議さで真っ白に白濁している。
PH 5.4という酸性寄りのためであろうか?松の木で作られた浴槽と床で4年ほどで張り替えるそうだ。白濁、少酸味、プラスチックのような化学薬品臭であった。硫黄臭なのであろうが連続の硫黄泉で慣れてしまい硫黄臭を感じなくなっているのかもしれない。
11鳴子温泉 西多賀の湯 (再訪)
60.5度の硫黄泉 緑白濁、白い湯の華浮遊 HS 12.1 S2O3 2.4 H2S 34.3 CO2 315と東多賀と違い遊離硫化水素多い。
西多賀温泉は東多賀温泉のすぐ隣ながら泉質が違う、鳴子温泉の含蓄のある温泉分布が分かる良い例である。西多賀の湯は緑白濁した湯が印象的である。浴槽や床は白い析出物で覆われ白骨温泉のようである。
60.5度の含硫黄芒硝重曹泉でHS 12.1mg S2O3 2.4mg H2S 34.3mgの硫化水素型である。緑白濁白湯の華多数浮遊、少硫黄苦味+少炭酸味、プラスチック臭と記録した。コンクリートの四角い内湯のみで簡素な浴槽である。しかし湯が良いので充分である。小さな木造2階建ての宿である。
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鳴子温泉郷2日間
1川渡温泉 藤島旅館 (再訪)緑白濁、たまご味、硫黄泉多しHS 1.5 S2O3 0.6 H2S 0.7にしては硫黄分多く感じる。
川渡温泉の老舗旅館。大きな木造の宿である。湯治旅館であるが、入浴料金200円で公衆浴場的にも使われている。以前訪問した通り、立派な玄関があり奥に浴室がある。四角いタイル貼りの大きな内湯が一つのみの簡素な温泉である。
硫黄分で緑白濁し、たまご味+苦味残る、硫黄臭多目、と観察した。分析表ではHS 1.5mg S2O3 0.6mg H2S 0.7mgながらそれ以上の硫黄分を感じる。大きな浴槽に掛け流しで良い温泉であった。
2川渡温泉 共同湯 (再訪)
黄緑色、たまご味、少甘味、硫黄臭あり。HS 2.0 S2O3 4.7 H2S 1.4にしては硫黄分多く感じる。
川渡温泉にある木造の共同湯。柱が表面に出た真壁造りの小さな建築である。立方体の屋根に湯気抜きの小屋根が付いた外観である。中は内湯が一つの温泉でタイルの床に石の縁の浴槽があった。掛け流しの湯の色が美しい。黄緑色白濁でたまご味、少甘味、硫黄臭が多めである。
藤島旅館より硫黄分が多く感じた。熱い湯とのことであったが今回は適温やや熱めで良い温度であった。腰までは白いタイルでその上は木造の壁である。高い天井に湯気抜きが付き共同湯の造りである。硫黄の含有量よりも匂いや色、味覚に硫黄分を多く感じる良い湯である。
3鳴子川の湯
野湯 黒い湯、白い湯あり足元自噴
鳴子の前に流れている大きな川には温泉が湧出し、そちこちでゆけむりが上がっている。河原に湧出しており、足元湧出源泉である。硫黄泉で白い湯と鉄分のある部分は黒い湯になっている。真っ白な沼と、黒い湯の流れがあり湯気が立っている。黒い湯の付近で底をスコップで掘り入浴した。沈殿していた黒い析出物が舞い上がり、その泥で真っ黒である。
少甘味で酸性はない、白い湯の部分でも入浴した。同じ泉質であるが鉄分が無い地点であろう。強い硫黄臭があり鳴子の東多賀の湯、西多賀の湯あたりの源泉に似ている。鳴子の温泉の実力が大きく、河原にも自噴してしまうという、素晴らしい温泉地であることを再認識した。
4鳴子温泉 紫雲峡
鳴子一の析出物の多い浴槽 うろこ状になっている
鳴子の川の対岸は末沢地区であるが、その中に鳴子一の析出物のある温泉があるというので行ってみた。65.5度のNaCa-HCO3、SO4泉で総計2091mgの源泉である。コンクリートの2階建てのホテルでささ濁り、少エグ味、微油臭と観察した。湯は石膏を含む重曹泉である。
個性は少ないが析出物で床がうろこ状になっており、浴槽の縁は析出物で大きく盛り上がっている。鳴子では随一であろう。石膏重曹泉の重曹分が析出するのであろう。黄色いキャラメルのような析出物が付着してごてごての浴槽の縁になっている。壮観である。
5荒湯地獄 (再訪)
野湯 透明、酸味、少硫黄臭 PH 2.0くらいの酸性泉。上下にスポット多し
荒湯地獄に再訪した。荒涼とした地獄地形で草木一本も生えていない真っ白な光景の中に温泉が湧出している。以前は真っ白な砂地を下って行ったが、今回は林の中を行った。沢が合流する地点で、それより上流は激熱で入浴不能である。今回は大きな浴槽が3ヶ所造られており快適に入浴できた。湯は透明な酸性泉でPH2.0ほどであろう。硫黄分は少ない。草津温泉のような感触である。
草木の生えていない白い斜面から湧出した源泉は滝のようになって下り落ち一部、淵のようになった地点で入浴できる。また合流する沢のほうにもブルーシートで造られた浴槽があった。荒湯地獄は白い砂で覆われた広い火口のような風景で噴気が出ているがそれが集まり、1ヶ所から沢に向かってV字谷になって流れ出ている。黄色い湯道になり湧出直後は100度近い高温であろう。
それが滝となって冷まされ入浴できる。湯は透明ながら酸味があり、硫黄臭は少ない。
6片山地獄 (再訪)
野湯 青白濁、少酸味、硫黄苦味、硫黄臭 37度前後 入浴スポット多し
地熱発電所の横を通り血の池沢に沿って湯の川が流れている。荒湯地獄と比べこちらは川が適温でどこでも入浴できる。酸味は少なく青白濁、少酸味+硫黄苦味、硫黄臭ありと観察した。
こちらは硫黄泉であろう。白い斜面や茶色の崖に覆われた沢は荒湯のような真っ白ではないが噴気が所々に立ち昇り野趣に富んだ光景である。裸足で登ってゆくと高温の噴気の場所があり危険である。しかし多くの入浴スポットがあり沢を200mほど入浴して歩いた。
深い部分は肩までしっかりと入浴できて快適である。いろいろな角度から写真を撮り、入浴を繰り返し時間の経つのを忘れてしまうほどであった。