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郡司が実際に行き、観察・記録した湯について書いています。
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2012/05/06 中部 
別所温泉、花屋。田沢温泉、ますやほか  

1別所温泉 花屋

長野県の温泉で中規模の別所温泉は信州の鎌倉とも言われ、神社仏閣と温泉街がある。共同湯は石湯、大師湯、大湯の3ヵ所にありそれぞれ凝った造りで良い。



別所温泉の宿は十数軒あるが第一の宿は花屋でしょう。6500坪の広い敷地に離れが点在し、中庭の池を囲んで渡り廊下で続く造りで国指定文化財になっている。内部は繊細な数奇屋の造りであるがエントランスはうって変わって白壁の城郭の造りである。白壁の塗り込めで2層の城のような外観の建築が玄関前にあり瓦屋根にはしゃちほこが載っている。豪快な印象のエントランスである。



隣の玄関は瀟洒な入母屋の破風である。その右側には食堂棟が白壁で続いている。玄関を入ると一転、白木造りの数奇屋風である。玄関中には格天井のラウンジがあり中庭に面して椅子が置いてある。2階は食堂で大正初期の建築のままである。



広い空間は船底天井で曲がりくねった梁が露出し、民家のような意匠であるが天井、壁が白なので洋風になっている。中庭に出ると渡り廊下が縦横に走り各棟や離れを繋いでいるが、これは繊細な造りである。細い柱に垂木の見える小さな屋根である。



室内を見て歩いた。80番の部屋は離れの部屋で続きの2間に掛け流しの内湯が付いている。81番も離れの部屋で欄間の透かし掘りや書院の化粧格子が精密である。照明器具がレトロで良い。



次にこの宿の白眉である21番の部屋に行く。ここは格天井に絵が書かれているので有名である。書院の化粧格子も凝っている。欄間は花鳥風月の襖絵である。次の見所は23番の部屋である。天井は格天井の端正なものであるが、書院の格子が繊細で素晴らしい。



網を打った絵が格子で造られこの宿随一であろう。また床柱にはかたつむりと竹が彫刻され楽しい。浴室は大理石風呂が圧巻である。



以前は男女別の浴室だったのだろうが一つにされて使われている。2つの浴室がある。左側が四角い浴槽と楕円形の浴槽で右側が四角い浴槽1つである。白いビアンコカラーラとピンク色のローズオーロラとグレーの大理石が主に使われ、緑色の蛇紋石も縁取りに使われている。



床は各種の石の張り分けで浴室全体が大理石で造られている。脱衣室との間にはステンドグラスが使われ、2つの浴室の隔ての上にもステンドグラスがある。湯は浴槽内部で循環しているが常に新湯を掛け流しで入れている。



透明、たまご味、硫黄臭ではっきりとした単純硫黄泉である。よわいすべすべもある。ほかに展望風呂と露天風呂がある。71番の部屋に泊まった。前室のある10畳間で欄間の造りが凝っていた。つつじの植えられた裏庭と玄関前の広場が見える部屋で快適であった。



2別所温泉 柏屋別荘

別所温泉で木造4階の宿が残っている。柏屋別荘である。玄関前の棟が4階の建築で、裏山にも2階建ての建築が続いている。内装は全て改修済で奇麗なレトロな空間になっていた。



しかし梁は古いままで風情のある宿である。浴室は畳敷きの内湯と小さな露天風呂が付いている。透明、たまご味、少硫黄臭の湯が掛け流しされていた。HS 12.4mgの単純硫黄泉で石湯や大師湯とも同じ源泉である。





 



 

3別所温泉 石湯共同湯

柏屋別荘の隣にある共同湯。木造平屋一部2階ながら屋根が積層していて、玄関前には唐破風と千鳥破風が連なり、奥に切妻の屋根が控えている。立派な凝った建築である。



浴室は半地下のように下ってゆく。大きな岩が露出した浴槽で以前は掛け流しであったが、循環になっていた。新湯を加えているのでオーバーフロー循環ということであるがカルキ臭があり残念であった。



4別所温泉 大師湯共同湯



トタン屋根の2層の造りになっている共同湯が大師湯である。湯は小さな円形のモザイクタイル浴槽に掛け流しで利用されており、良い使い方であった。透明、たまご味、少硫黄臭の温泉は別所特有の源泉である。



5太朗山温泉 4578湯

上田でレンタカーを借りて少し温泉巡りをした。地図を見ていると太朗山温泉という未湯が発見できたので行ってみた。国道沿いの日帰り温泉センターでカラフルなパチンコ屋のような外観である。湯はよかった。



22.3度の単純硫黄泉ながら加熱掛け流しにしており特に露天風呂の壷風呂がたまご味と硫黄臭が感知出来る。HS 2.4mg H2S 0.2mgながら新鮮な湯ははっきりと硫黄臭がわかり良いものであった。内湯と露天風呂は硫黄臭は消えていた。



6田沢温泉 ますや

以前訪問しその豪快な建築に驚いた宿。一度宿泊もしたことがある。今回3回目ながら、文化財の宿の資料を集めているため各部屋と外観の写真を撮影がてら入浴した。木造3階建ての大きな棟が2棟並び手前に1段下がって3階建ての建築がある。ここに藤村の間があり現在でも使われている。



この間に玄関があり小さなロビーがある。藤村の間は2部屋続きの和室で華美な装飾はないがしっかりと造られた和室である。次に木造3階奥の棟の角部屋51番が良い。書院の透かし彫りの彫刻と化粧欄間が凝っている。高台の3階にあり眺望が一番の売りであろう。



いまだに木製建具で文化財になったのが分かる。障子を開けると欄干の付いた廊下が廻っておりガラス戸が付いている。驚いたことに手前の棟の3階はガラス窓が入っておらず室内と外部は吹き放しの欄干である。障子1枚だけの部分がある。ここは夏のみ使うとのことである。全体では、古さを持った風格があるが各部屋は結構傷みがきている。しかし大きな宿で全て使えばかなりの部屋数になるであろう。



浴室は一番奥に新築の内湯と露天風呂があるが手前の棟の地下に家族風呂として小さな浴室がある。昔に泊まった時はここしかなかった。モザイクタイルの浴槽に38.5度の単純硫黄泉が掛け流しになっている。湯量が少なくヌル湯であった。





 



 

7田沢温泉 有乳湯共同湯

田沢温泉は湯量豊富である。ヌル目の湯であるが豊富に使われヌルさを感じないほどである。有乳湯は新築の共同湯で立派に造られた。外観は山田温泉の共同湯や野沢大湯までは至らないにしても、木造の凝った造りだが内部はタイル貼りの簡素なもので現代的なのが妙にマッチしていない。しかし豪快に溢れる掛け流しの湯は感動的である。



浴槽の手前にある掛け湯の色が薄く緑がかっているのが不思議である。湯は透明、たまご味、硫黄臭の単純硫黄泉で39.5度の源泉である。総計229mgと少ないがHSイオンが7.1mg含有され存在感が増している。大量の湯が掛け流しされており湯に浸かると湯中の気泡が付着する。身体が真っ白になり素晴らしい体験ができる。その気泡を取り去るときにつるつるの感触があり面白い。



驚いたのは外にある洗濯場にも太いパイプから大量に湯が流されておりもったいないほどである。この共同湯から溢れた湯は前の下水にゴーゴーという音を立てて流れている。湯量豊富なことは素晴らしいと思った。



8沓掛温泉 小倉の湯共同湯

沓掛温泉に久しぶりに訪問した。小倉の湯共同湯は新装されていた。湯が大量に掛け流しされており、浴槽の縁の側溝は湯が流れている。浴槽は2つに分かれ、片方は1号泉の自噴源泉で36度ほどである。しかしそちらにじっと浸かっている人がいるのはヌル湯の特徴である。



隣に39度ほどの4号泉の浴槽がありこちらは700mの掘削自噴である。ともにアルカリ性単純温泉でHSイオンが1.5mg含まれている。透明、少たまご味、無臭の湯である。しかし豊富な湯で掛け流しが多く良い共同湯である。



9      しなの木温泉 ひな詩の湯

4579湯



上田市内に出来た日帰り温泉施設。メタ珪酸の規定泉で17.4度の源泉である。透明、無味、無臭、循環、加温、殺菌である。内湯と露天風呂のみ温泉であるが特に個性は無かった。

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2012/05/05 関東 
東京周辺の温泉 溝口、千年、蒲田、奥多摩ほか

1      溝口温泉 喜楽里

重曹食塩泉 41.3度 1800m掘削 掛け流しの露天風呂あり



第3京浜国道の川崎インターチェンジの近くに新しく出来た温泉センター。和風の建築である。総計3541mgの重曹食塩泉(Na-Cl,HCO3)で紅茶色透明(透明度1m)の美しい色である。はっきりとした塩エグ味があり、掛け流し湯口では香ばしい少臭素臭がある良い湯であった。



1800mの掘削で41.3度の源泉が出ている。温泉利用の浴槽は、四角い石造りの内湯が1つあり循環である。露天風呂には掛け流しの上の湯と循環の下の湯がある。庭の中に円形の岩組みの浴槽があり小さな上の湯と大きめな下の湯がある。ともに加熱はされている。つるつるの感触がある肌触りの良い湯で気に入った。つるつるやや強しと記録した。



 

2      千年温泉

純重曹泉 19.6度 黒湯 有機物311.7mg 銭湯の温泉



武蔵新庄駅近くにある銭湯の温泉。久しぶりに訪問した。19.6度の純重曹泉で有機物が311mgと多量に含有されており、黒褐色の色は透明度6センチほどである。300mgを超える有機物の含有量は国内でも屈指でいままで最高値であった鶴見の松の湯435mgや横浜の鎌倉館364mgなどが廃業しこの千年温泉がトップクラスであろう。



一般的な銭湯で、内湯の2つの浴槽が温泉が使われている。そのほかに露天風呂も黒湯の温泉である。毎分10.5リットルという湧出量ながら各浴槽でカランで源泉を足すのが自在になっておりよかった。黒褐色(6センチ)、エグ味、微わら臭あり、と観察した。総計2139mgで純重曹泉ながらつるつる感はなかった。



3      桜館

鉄筋3階建の銭湯 黒湯 腐植質68mg



大田区の池上駅の近くにある温泉銭湯。鉄筋コンクリートの3階建てで緑色の建物である。総計1106mgの純重曹泉である。68mgの腐植質にしては黒さが濃く、黒褐色で透明度3~4センチである。エグ味で、堆肥臭がある。温泉は露天風呂だけで使われており1つの浴槽である。



循環が残念である。つるつるの感触もあり存在感は大きい。毎分140リットルの湧出量があるので加熱掛け流しであるとさらに良いと思われる。別棟で食事処があり、マッサージもあるスーパー銭湯と一般の銭湯の中間的な存在である。



4      久松温泉

コンクリート造の黒湯の銭湯。内湯の2つの浴槽のみ温泉 有機物57.8mg



池上本門寺の近くにある黒湯の温泉銭湯。16.8度の温度で総計が950mgなので重曹で温泉規定に入っている。有機物が57.8mg含有され透明度7センチほどの黒湯である。内湯の2つの浴槽だけ温泉が利用されている。黒褐色(7センチ)、少エグ味、無臭である。弱いつるつる感のある湯であった。



 



 

5      数馬温泉 蛇の湯たから荘

東京でも最も西にある温泉で秋川渓谷の最奥部にある。ここから奥多摩有料道路で奥多摩湖に抜けることができる。中央高速道路で上野原インターチェンジで降りて峠を越えて秋川の渓谷に下っていった。12月では路面も一部凍結しており、バイクの走行には細心の注意を払った。



渓谷を遡り数馬の集落に入ると左側にかぶと造りと言われる茅葺きの屋根があり、これが蛇の湯たから荘である。以前にも訪問したが変わらずに残っていた。浴室は渓谷沿いに下って行く。大きなガラス窓のある内湯のみの施設である。10.6度の単純硫黄臭が湧出しており、総計160mgの薄いものであるがHSイオンを12.8mg含有し加熱オーバーフロー循環なので温泉の個性は残っていた。



透明、無味ながら仄かな硫黄臭があった。OHイオンを5.4mg含有しアルカリ性の湯でPH10.5と高いアルカリ性である。しかし成分総量が少ないのでつるつるの感触は弱く、かすかにすべすべする程度であった。伊豆石貼りの浴槽で御影石の縁の造りである。





 

6      深大寺温泉 ゆかり



調布の市街地の中にある温泉入浴施設で深大寺の近くにある。加温循環の黒湯で加温循環で利用されている。五右衛門風呂のみ掛け流しとのことだ。40.3度の食塩泉で総計9019mgの等張性の源泉である。有機物を51.7mg含有しつるつるの黒湯である。飲むとはっきりとした塩味がある。こじんまりとした施設で都心に近いのを忘れる風情である。

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2012/05/04 東北 
鳴子滝の湯、東鳴子油臭の温泉群

1鳴子温泉 滝の湯共同湯 (再訪)

酸性硫黄Na、Al,Ca,Fe-SO4泉 46.2度 町営下地獄源泉 白濁、酸味、硫黄臭



滝の湯は鳴子の有名な共同湯で混雑していた。小さな湯小屋ながら大きめな内湯浴槽が室内に大きく取られている。裏側に打たせ湯がありこちらが温泉神社源泉で、浴槽が町営下地獄源泉である。分析表ではPH2.8の酸性泉で酸性硫黄緑礬石膏明礬泉である。



鳴子での酸性泉は少なく珍しい。裏手の地獄地形の表層水なのであろう。すぐ隣のゆさやの源泉はアルカリ性である。青森ひばの床、浴槽で46.2度の源泉が大きな樋から掛け流されている。真っ白に白濁し、酸味、硫黄臭の温泉である。ヌル目の打たせ湯の源泉は炭酸味がした。



2鳴子温泉 ゆさや (再訪)

硫黄Na-SO4 99.5度 HS 83.4 CO3 90.0 緑色、硫黄エグ味、たまご味、硫黄臭あり、つるつるの湯



うなぎ湯の本家で有名なゆさやである。滝の湯の隣にあり、100メートル以内の掘削でまったく違った源泉が湧出している。99.5度の含硫黄芒硝泉でPH 8.9である。硫黄の含有量が多く全国でも屈指のHS 83.4mgを誇っている。CO3も90mg含有されつるつるの湯になっている。



重曹泉でなくても炭酸イオン(CO3)が存在すればつるつるするのである。緑色不透明、硫黄たまごエグ味、硫黄臭と観察した。今回はつるつるが少々弱かったような気がした。好調であれば中山平に匹敵するつるつるであるが、やや少なめであった。



3鳴子温泉 すがわら (再訪)

透明、少エグ味、少薬品臭 CO3 50.3 H2SiO3 498.6 つるつるの湯



鳴子の東寄りにある宿。平成20年に分析し直すと、総量が倍増したとのこと。またCO3が50.3mg メタ珪酸が498.6mgと個性的物質も含有したまに青くなる温泉である。



別府や湯布院の一部に見られた青い湯は、鳴子にもあったのだ。東の横綱と思われる多数の泉質と個性的な湯がたくさんある鳴子にまた変り種の温泉を発見した。透明、少エグ味、少薬品臭でつるつるの湯であった。今回は青くなかったが青くなった写真をみた。



4東鳴子温泉 まるみや (再訪)

薄赤褐色、渋エグ味、少金気臭 鄙びた湯治場、日帰り不可



東鳴子温泉は鉄分を含み赤味をもった源泉の赤湯と黒い湯の重曹泉が湧出する温泉地で各旅館によってその個性が違い、素晴らしい温泉地帯である。東鳴子の入り口に近い鳴子温泉寄りのまるみやは独自源泉の浴槽が良い湯で薄い赤褐色の色の湯である。



47.5度の重曹泉で溶存1016mgの薄いものだが、鉄分を1.2+1.5で2.7mg含有し存在感のある湯になっている。弱い炭酸味も感知できる新鮮な湯である。薄赤褐色、渋エグ味、少金気臭と観察した。



半地下のようなコンクリート浴槽が独自源泉の浴槽で、1階には赤湯共同源泉を使用している浴槽もある。こちらは透明で存在感は少ない。日帰り入浴不可の湯治専門宿で古い風情のある建築であった。



5東鳴子温泉 田中旅館 (再訪)現在廃業しました

黒褐色、エグ味+苦味残る、油刺激臭多し 円形のドーナツ型浴室



東鳴子の東部に行くと黒湯が湧出している。代表的な例が田中旅館である。黒褐色の湯でエグ味+苦味残る、油臭多しと記録した。特に匂いが強烈で、刺激的な油臭が印象的である。ほかには初音旅館や高友旅館、馬場温泉なども黒湯である。80.5度の重曹泉で総計1808mgと1722mgの2枚の分析表があった。



ドーナツ型の浴槽で穴の部分は吹き抜けで外部になっている。変った浴槽で混浴である。東京の黒湯が高温で湧出し、さらに油臭がするといった温泉である。強い存在感のある温泉である。古いコンクリート造の浴室棟で宿は奥に木造の瀟洒なものが建っている。昔、鳴子に初めて来た時に泊まった温泉である。20年近く前であるが時間が止まったかのように同じく存在していた。



6東鳴子温泉 高友旅館 (再訪)

黒湯はオリーブ色、刺激味、タール臭 ひょうたん湯は薄褐色、エグ味強し、油臭



田中旅館の前にあるのが高友旅館である。ここには名湯「黒湯」とシャボン玉のような泡が表面に出来る「ラムネ湯」が有名である。木造の大きな宿で迷路のように建っている。大浴場的に使われているのが黒湯で混浴である。以前は4ヶ所の浴槽はみな混浴であったが今回はラムネ湯が女湯、ひょうたん湯が男湯になっていた。ラムネ湯とひょうたん湯は同じ源泉なので良いだろう。



しかし湯の入れ方で泡の浮くラムネ風呂に入れなくなったのは残念であった。黒湯はその名前のごとく黒いわけではなく、オリーブ色である。黄褐色の濃いものである。刺激味で、タール臭がある。幸の湯源泉で59.2度の含硫黄重曹泉(S-Na―HCO3)でHS 2.4mg H2S 2.2mg CO2 189mgである。しかしアスファルトのタールのような刺激臭が特殊である。



油臭の濃さは田中旅館に一歩譲るが、すこし匂いの種類が違う。ラムネ湯に使われている玉の湯源泉は51度の含硫黄重曹泉で薄褐色透明、エグ味強し、油臭である。つるつるがやや強めで良い感触の温泉であった。朝一番の掻き回されていない時には表面一面にシャボン玉のような泡が付くのである。何度か遭遇したことがある。



7馬場温泉 湯小屋 (再訪)

黒褐色(コーラ色)刺激味、少油臭あり、つるつるの湯 泡付きあり、47度前後の熱い湯



馬場温泉の庭先にある国指定の文化財でもある湯小屋は立て替えられていた。もう5年になるというので、それ以上のご無沙汰であったわけだ。風雪で板の表面も茶色に染まり風格が出てきた。以前のものとあまり変らない感じで建っていた。文化財でも同じように立て替えて良いのだそうだ。



ここの湯はいつ来ても熱い。今回は夏なので、48度くらいの熱い湯になっていた。入浴すると泡付きがあり新鮮な良い湯である。匂いも良い。しかしなんせ熱すぎて長湯が出来ないのが残念である。ここは冬向けである。黒褐色(コーラ色)、刺激味、少油臭であった。つるつるの感触もあり、色、味、匂いの個性もはっきりとある名湯である。東鳴子の宝である。



なお別源泉が母屋と宿の間にあり、温度もあり似たような源泉ながら使われておらず、ただ捨てられているのがもったいなかった。宿の湯は同系の重曹泉でコンクリートの湯小屋に三角形の浴槽がある。屋根は木造である。自炊もやっている新しい湯治宿である。ここに泊まり中庭の湯小屋で湯三昧すれば素敵であろう。次回の楽しみとしたい。



 

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東北 
奥ノ院地獄と鳴子の名湯 11か所

1奥の院地獄

野湯 高温の川、土砂崩れで泥湯になっている。アイボリー白濁、酸味、硫黄臭



奥の院の沢は、驚くことに車道に至る地点ですでに適温の湯の流れである。入浴スポットを探し登ってゆくと湯はかなり高温になってきた。43度ほどあるであろう。先日の地震の影響か?途中に大きな崩落地点があり、大木が倒れており、土石流の跡とも思える凄惨な状況であった。



しかし泥が大量に溜まった底に湯が流れアイボリー色の湯であった。酸味は片山地獄と荒湯地獄の中間ほどの酸味で、硫黄臭は少ない。奥には壮大に上がっている噴気地点が見える。しかしそこまでは行かずに手前で入浴した。これ以上登ると高温で入浴不能になると考え、土石流の地点であった。熱い湯がこれほど流れているのは凄いことだと思う。



2中山平温泉 丸進別館 (再訪)CO3 166mg 薄白濁、苦エグ味、土(墨)の香り.つるつる最も強し 斜めの浴室  現在休業中



中山平温泉は才色兼備の素晴らしい温泉である。つるつるの入浴感触と多量に含有された硫黄分、高温の源泉、渓谷と山の美しい風景。噴気が所々に噴出し温泉情緒を高めている。日本を代表する良い温泉である。丸進別館は小さな宿で最近は土日しか営業していない。宿泊は止めてしまったようだ。なお現在は休業中である。



残念である。ここの浴室が不思議で、全体に傾いており、ドアが斜めに付いている。湯が溢れると上に向かって流れるような不思議な空間である。湯は100度の含硫黄芒硝重曹泉(S-Na-HCO3,SO4)で総計1198mgの源泉である。分析値を見て驚いた、以前の記録であった炭酸イオン(CO3)の含有量がさらに増して166mgとなっていた。硫化水素イオン(HS)も32mgと多い。



遊離硫化水素(H2S)も1.1mg含有し湯の色は薄白濁している。苦エグ味、墨(土)の香りであった。入浴するとつるつるの感触を超えてヌルヌルである。中山平で最強のつるつる度であった。匂いが硫黄臭ではなく墨のような匂いで変わり種である。厚い湯が少量掛け流しされていた。





 

3中山平温泉 レストハウス星沼 (再訪)透明、たまご味、少硫黄臭 つるつる強し 綺麗な湯



国道沿いにあるレストハウス星沼は健在であった。星沼山荘とも書かれている。宿の奥に簡素なコンクリート造りの浴槽が男女1つずつある。湯が良い。含硫黄重曹泉で1号源泉と3号源泉の2枚の分析表があり98度と98.2度である。ともに炭酸イオンが主成分でCO3 134.7mg 153.7mgと多量に含有されている。



硫黄分はHSの23.3mgとS2O3の1.1mg 3.5mgである。透明、たまご味、少硫黄臭である。こちらでは丸進別館とは違い正統派の硫黄臭がした。つるつるも強く気持ちの良い入浴感である。湯は新鮮なためか白濁や緑がかっておらず綺麗な透明である。中山平温泉の特徴を良く出した湯であった。



4中山平温泉 鳴子ラドン温泉(休業中)

HS 37 S2O3 5.6 H2S 2.1 美しい緑色透明、少エグ味、少硫黄臭 つるつるあり、東蛇の湯と同じ源泉 3.11の地震の影響で休業中である。



何度か訪問した東蛇の湯と同じ経営のラドン温泉に行った。自炊棟が東蛇の湯でラドン温泉は旅館部である。鉄筋のホテルであった。内湯と露天風呂は離れてある。湯は総計1137mgの含硫黄―芒硝重曹泉で100度である。HS 37.3mgと多く、CO3は44.9mgと少ない。東蛇の湯と同じ源泉である。内湯は薄緑色で露天風呂は濃い緑色で美しかった。



つるつるは前の2つに比べると少なくつるつる程度であった。以前東蛇の湯に入浴した時の記憶では猛烈なつるつるであったので使い方の違いであろうと推測した。女湯は内湯が白濁していたと聞いた。温泉は使い方でずいぶん変ってしまうものだと感じた。内湯は源泉追加しながら浴槽内部で循環されており熱い湯を冷ますためだと思われる。露天風呂は弱く掛け流しされていた。



5吹上温泉 峯雲閣 (再訪)泊 食塩泉 透明、無味、湯口微硫黄臭 木造全8室の小さな宿 渓流に面する混浴大露天風呂あり



吹上温泉は川の両側より温泉が流れ込み野湯の川に入浴できる温泉である。むらさき地獄という源泉は噴出泉で壮観である。その吹上温泉で1軒の宿。以前訪問して玄関の豪快な吹き抜けと古い民家の造りが記憶に残っていて宿泊した。



前に流れる川は紫地獄からの湯が合流して温かく、入浴可能であるが今回は雨で増水していて冷たかった。湯は92.2度の食塩泉で総計1086mgの清澄な温泉である。透明、無味、湯口微硫黄臭というものであった。木造の全8室の小さな宿で内湯と混浴の大露天風呂がある。ともに掛け流しで利用されている。



6吹上温泉 間欠泉の湯

大きな露天風呂、間欠泉の湯を入れている。透明、無味、無臭 弱食塩泉か?



朝一番で吹上温泉の天然記念物の間欠泉を見学に行く。庭に露天風呂があり、噴出を待つ間に入浴した。大きな混浴の露天風呂だけの施設である。間欠泉の湯を溜めておきそれを掛け流しで注いでいる。



プールのような大きな浴槽だが熱い湯なので湯口に近づくとかなり高温になる。湯は峯雲閣と同系の食塩泉または単純泉であろう透明、無味、無臭であった。川に沿った露天風呂で風情は良く造られていた。入浴後に丁度、間欠泉の噴出が始まり見ることができた。



7神滝温泉 (再訪)

古い木造宿 金気のある食塩泉 古びたコンクリート浴槽



神滝温泉は以前のままの鄙びた宿で存在していた。煮締めたように茶色に変色した外壁の板が古さを物語っている。しかし2階と浴室の窓はアルミに変えられていた。障子で廊下と区切られた部屋の前を通り浴室に行く。温泉で変色した浴槽は四角いものが一つで男女混浴である。



64.4度の食塩泉で総計1917mgの温泉である。鉄(Fe)を1.7mg含有し鉄渋味と金気臭が感知できた。湯は湯口の栓を抜くと豪快に掛け流しになる。透明、少塩味、鉄渋味、少金気臭と観察した。古い木造宿で鳴子屈指の鄙びた温泉宿であろう。



8鳴子温泉 農民の家 (再訪)

4本の源泉あり、硫黄泉がメイン、炭酸泉はCO2 433.7mgで規定に入っていない 炭酸分抜けていた。



鉄筋の大きなホテル、浴室が4ヵ所にあり、それぞれ違う源泉で温泉好きにははずせない宿である。農民の家という名前の通り、外観から見たホテルというよりも、大きな湯治宿である。人気があるのか混雑している。硫黄泉3本と炭酸泉がある。大浴場は男女別で79.2度の3号泉が使われている。HS 44.6mg S2O3 0.7mg H2S 10.1mgである。白濁(20センチ)、硫黄の甘苦味、焦げた硫黄臭多しであった。



分析表とおりかなりの硫黄泉で立派な源泉である。炭酸泉は33.1度の4号泉で CO2 433.7mgであるが炭酸分は抜けてしまっており透明、エグ味、少金気臭のヌル湯であった。源泉のまま掛け流しにされているが炭酸分が無いのは泉脈が変ったと思われる。混浴の浴室である。もう一つの混浴の硫黄泉浴場がある。64.2度の1号泉でHS 10.8mg S2O3 3.1mg H2S 47.6mgという硫化水素型である。



白濁(18センチ)、硫黄苦味強し、硫黄臭少ない、と観察した。大浴場より白濁が濃い湯であった。もう一つのやすらぎの湯浴場という浴室は74度の2号泉でHS 4.5mg H2S 20.6mgの源泉であるが男湯は透明、硫黄甘味、少硫黄臭であった。硫黄泉ながらここだけ透明であった。4ヶ所の源泉に入れる温泉パラダイスである。



9鳴子温泉 姥の湯 (再訪)

4本の源泉 硫黄泉、単純泉、芒硝泉、重曹泉



姥の湯も4本の源泉があり44.2度の単純泉、54.2度の芒硝重曹泉、60度の土類芒硝泉、63.5度の硫黄泉の4本である。木造2階建ての大きな民家風の施設である。芒硝重曹泉は露天風呂に使われており、透明、エグ味、少湯の香である。つるつるの感触があった。



タイル貼りの内湯が土類芒硝泉で透明、無味、湯口微硫黄臭であった。硫黄泉は木造の湯小屋で雰囲気が良い。木の浴槽で真っ白な湯が入っていた。HS 2.1mg H2S 1.8mgとは思えない硫黄分で白濁、硫黄甘味、焦げ硫黄臭であった。



10鳴子温泉 東多賀の湯 (再訪)

45度の硫黄泉掛け流し、真っ白な湯 HS 31.2 H2S 2.1 CO2 481



鳴子駅の下側の国道沿いにある温泉宿。西多賀の湯と隣り合っている。45度の含硫黄石膏芒硝泉(S―NaCa-SO4)でHS 31.2mg S2O3 0.3mg H2S 1.1mgという硫黄型である。緑色になりそうだが温泉の不思議さで真っ白に白濁している。



PH 5.4という酸性寄りのためであろうか?松の木で作られた浴槽と床で4年ほどで張り替えるそうだ。白濁、少酸味、プラスチックのような化学薬品臭であった。硫黄臭なのであろうが連続の硫黄泉で慣れてしまい硫黄臭を感じなくなっているのかもしれない。



 

11鳴子温泉 西多賀の湯 (再訪)

60.5度の硫黄泉 緑白濁、白い湯の華浮遊 HS 12.1 S2O3 2.4 H2S 34.3 CO2 315と東多賀と違い遊離硫化水素多い。



西多賀温泉は東多賀温泉のすぐ隣ながら泉質が違う、鳴子温泉の含蓄のある温泉分布が分かる良い例である。西多賀の湯は緑白濁した湯が印象的である。浴槽や床は白い析出物で覆われ白骨温泉のようである。



60.5度の含硫黄芒硝重曹泉でHS 12.1mg S2O3 2.4mg H2S 34.3mgの硫化水素型である。緑白濁白湯の華多数浮遊、少硫黄苦味+少炭酸味、プラスチック臭と記録した。コンクリートの四角い内湯のみで簡素な浴槽である。しかし湯が良いので充分である。小さな木造2階建ての宿である。

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2012/05/03 東北 
鳴子の野湯3か所ほか 荒湯、片山、湯の川

鳴子温泉郷2日間

1川渡温泉 藤島旅館 (再訪)緑白濁、たまご味、硫黄泉多しHS 1.5 S2O3 0.6 H2S 0.7にしては硫黄分多く感じる。



川渡温泉の老舗旅館。大きな木造の宿である。湯治旅館であるが、入浴料金200円で公衆浴場的にも使われている。以前訪問した通り、立派な玄関があり奥に浴室がある。四角いタイル貼りの大きな内湯が一つのみの簡素な温泉である。



硫黄分で緑白濁し、たまご味+苦味残る、硫黄臭多目、と観察した。分析表ではHS 1.5mg S2O3 0.6mg H2S 0.7mgながらそれ以上の硫黄分を感じる。大きな浴槽に掛け流しで良い温泉であった。



2川渡温泉 共同湯 (再訪)

黄緑色、たまご味、少甘味、硫黄臭あり。HS 2.0 S2O3 4.7 H2S 1.4にしては硫黄分多く感じる。



川渡温泉にある木造の共同湯。柱が表面に出た真壁造りの小さな建築である。立方体の屋根に湯気抜きの小屋根が付いた外観である。中は内湯が一つの温泉でタイルの床に石の縁の浴槽があった。掛け流しの湯の色が美しい。黄緑色白濁でたまご味、少甘味、硫黄臭が多めである。



藤島旅館より硫黄分が多く感じた。熱い湯とのことであったが今回は適温やや熱めで良い温度であった。腰までは白いタイルでその上は木造の壁である。高い天井に湯気抜きが付き共同湯の造りである。硫黄の含有量よりも匂いや色、味覚に硫黄分を多く感じる良い湯である。



3鳴子川の湯

野湯 黒い湯、白い湯あり足元自噴



鳴子の前に流れている大きな川には温泉が湧出し、そちこちでゆけむりが上がっている。河原に湧出しており、足元湧出源泉である。硫黄泉で白い湯と鉄分のある部分は黒い湯になっている。真っ白な沼と、黒い湯の流れがあり湯気が立っている。黒い湯の付近で底をスコップで掘り入浴した。沈殿していた黒い析出物が舞い上がり、その泥で真っ黒である。



少甘味で酸性はない、白い湯の部分でも入浴した。同じ泉質であるが鉄分が無い地点であろう。強い硫黄臭があり鳴子の東多賀の湯、西多賀の湯あたりの源泉に似ている。鳴子の温泉の実力が大きく、河原にも自噴してしまうという、素晴らしい温泉地であることを再認識した。



4鳴子温泉 紫雲峡

鳴子一の析出物の多い浴槽 うろこ状になっている



鳴子の川の対岸は末沢地区であるが、その中に鳴子一の析出物のある温泉があるというので行ってみた。65.5度のNaCa-HCO3、SO4泉で総計2091mgの源泉である。コンクリートの2階建てのホテルでささ濁り、少エグ味、微油臭と観察した。湯は石膏を含む重曹泉である。



個性は少ないが析出物で床がうろこ状になっており、浴槽の縁は析出物で大きく盛り上がっている。鳴子では随一であろう。石膏重曹泉の重曹分が析出するのであろう。黄色いキャラメルのような析出物が付着してごてごての浴槽の縁になっている。壮観である。



5荒湯地獄 (再訪)

野湯 透明、酸味、少硫黄臭 PH 2.0くらいの酸性泉。上下にスポット多し



荒湯地獄に再訪した。荒涼とした地獄地形で草木一本も生えていない真っ白な光景の中に温泉が湧出している。以前は真っ白な砂地を下って行ったが、今回は林の中を行った。沢が合流する地点で、それより上流は激熱で入浴不能である。今回は大きな浴槽が3ヶ所造られており快適に入浴できた。湯は透明な酸性泉でPH2.0ほどであろう。硫黄分は少ない。草津温泉のような感触である。



草木の生えていない白い斜面から湧出した源泉は滝のようになって下り落ち一部、淵のようになった地点で入浴できる。また合流する沢のほうにもブルーシートで造られた浴槽があった。荒湯地獄は白い砂で覆われた広い火口のような風景で噴気が出ているがそれが集まり、1ヶ所から沢に向かってV字谷になって流れ出ている。黄色い湯道になり湧出直後は100度近い高温であろう。



それが滝となって冷まされ入浴できる。湯は透明ながら酸味があり、硫黄臭は少ない。



6片山地獄 (再訪)

野湯 青白濁、少酸味、硫黄苦味、硫黄臭 37度前後 入浴スポット多し



地熱発電所の横を通り血の池沢に沿って湯の川が流れている。荒湯地獄と比べこちらは川が適温でどこでも入浴できる。酸味は少なく青白濁、少酸味+硫黄苦味、硫黄臭ありと観察した。



こちらは硫黄泉であろう。白い斜面や茶色の崖に覆われた沢は荒湯のような真っ白ではないが噴気が所々に立ち昇り野趣に富んだ光景である。裸足で登ってゆくと高温の噴気の場所があり危険である。しかし多くの入浴スポットがあり沢を200mほど入浴して歩いた。



深い部分は肩までしっかりと入浴できて快適である。いろいろな角度から写真を撮り、入浴を繰り返し時間の経つのを忘れてしまうほどであった。

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