1瀬見温泉 喜至楼 泊
千人風呂が有名な喜至楼に泊まった。豪壮な入母屋造りの木造3階の本館の入り口から入ると、受付は裏の別館とのことである。
別館も木造3階建ての古い建築である。今日の部屋は3階の角部屋になった。一番の部屋だと思う。別室も付いた広い間取りでよかった。喜至楼は瀬見温泉の老舗で木造の大きな宿である。すぐ横が温泉神社でまさに湯元でしょう。前が共同湯である。
浴室は円形の大きな浴槽の千人風呂と小判型の小さめなあたたまり風呂と岩風呂がある。千人風呂は混浴である。玄関に付いたレリーフの意匠が古い様式を伝えている。
着物姿の女性がお辞儀をしているのと松の木が壁に透かし彫りになっている。また千人風呂入り口に白髪の老人と犬の彫刻があり、あたたまり風呂の入り口にも熊と金太郎が付いていて楽しい意匠である。
熱い湯で大きな円形のモザイクタイルの浴槽の底から湯が掛け流しになっている。浴槽では透明、無味、無臭の綺麗な湯であるが、庭先にある温泉神社前の源泉では透明、少エグ味、微硫黄臭の湯でやや個性があった。
2羽根沢温泉 紅葉館
羽根沢温泉は新庄の北部の山里にある温泉地。数軒の宿がある小さな温泉である。ここの湯が素晴らしい。含食塩重曹泉でつるつるの浴感が強く、国内でもベストテンに入ると思われる。
弱い油臭もあり個性的な温泉である。紅葉館に入浴した。同じ源泉ながら5階の展望風呂に掛け流しされている。透明、重曹たまご味、微硫黄臭と観察した。
つるつるはあるが以前の羽根沢の強さがない。分析表によるとCO3は31.1mgと一般的な数値であった。
含食塩重曹泉で溶存3848mgの温泉である。モザイクタイル貼りのひょうたん型の浴槽で源泉が弱く掛け流しで利用されていた。
3羽根沢温泉 加登屋
羽根沢でも老舗の加登屋にも寄ってみる。八角形の浴室に湯が掛け流しされており、新鮮で匂いがあった。
透明ささ濁り、重曹たまご味、油臭と観察した。湯量が多いのと、源泉から近いのが良いのであろう。
つるつるも紅葉館より強く良い温泉であった。食塩重曹泉の47.2度で溶存3848mgの源泉は同じである。
4戸沢温泉 ぽんぽ
過去に訪問してその特有の匂いが記憶に残っている温泉。つるつるも羽根沢に匹敵していて良い源泉である。
立派なコンクリート打ち放しの建築で立派な美術館のようである。エントランスに入るとワッフルスラブの天井で大空間になっている。
湯は64.2度の重曹食塩泉で総計6517mgと羽根沢より塩分が多くなっている。重曹と食塩が拮抗している泉質である。特に炭酸イオン(CO3)が142.5mgと国内屈指の量になっておりつるつるやや強しの良い感触である。
羽根沢の加登屋に匹敵している、つるつる度合いである。透明、塩エグ味、少油臭に特有の薬臭がある。個性的な源泉である。
中央部から掛け流しにして浴槽内で循環している、しかしほぼ掛け流しと言って良いであろう。温泉センター系にしては満足の行く温泉であった。
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1東根温泉共同湯 いしの湯
山形空港着発で山形県北部の温泉巡りをした。ほとんどが再訪であるが、ずいぶん久しぶりの温泉もあるので記憶が薄くなり、新規温泉のような気持ちのところもあった。その一つに東根温泉がある。どこに入浴したか記憶がなくなっているほどに昔の訪問である。
4ヶ所ほどの共同湯があるがこのたびは鄙びた民家のような外観のいしの湯に入浴した。67.9度の芒硝食塩泉(Na-Cl,SO4)で蒸発残留物1028mgの単純泉に近いものである。
しかし湯の存在感はある。薄い褐色の色で、エグ味があり、微硫黄臭と微油臭があった。小さな浴槽に掛け流しされており熱い湯であった。
2冨本温泉
山形は11月というのに雪が積もり冬景色であった。この冨本温泉は山沿いの奥にあり、除雪していなければは入れないが、なんとか1車線のみ細く除雪してあった。小さな鄙びた旅館の1軒宿である。
浴槽が風情ある。楕円形のタイル浴槽が2連になっており、一つは源泉掛け流し、一つは加熱掛け流しであった。脱衣場は別れているが浴室は混浴である。共同湯の湯小屋のような天井の高い空間であった。
29.7度のアルカリ性単純温泉でPH9.7と高いアルカリ性である。そしてCO3 23.6mg含有しておりつるつるの湯になっていた。透明、少甘味、無臭であるがつるつるで存在感はある。昔に訪問したままに残っていた。
3銀山温泉 共同湯
雪景色の銀山温泉に行った。風情のある夜景になっており、金曜日の夕方とあって多くの客が雪の中を歩いて三脚で写真を撮影していた。私も木造3階の古い建築が並ぶ温泉街の写真を撮った。
小関館に入浴しようとしたが営業されておらず、古びた風情の建築と浴室が使われておらず残念であった。このまま廃業してしまうかのようである。改築された藤屋に入浴しようとお願いしたら貸切風呂のみの施設で、現在満室であると断られた。しかし建築家隈研吾氏の建築は和風ながらシンプルで1階が敷地のほとんどがエントランスロビーであったのには驚いた。狭い敷地で1階すべてをロビーにしてしまうのには大胆な設計である。
それで隣の共同湯に入浴した。59.1度の含硫黄芒硝食塩泉(S―Na―Cl,SO4)でHS3.3mg H2S 3.8mgの含有量である。透明、弱塩味+たまご味、硫黄臭の良い湯が浴槽に掛け流しになっていた。御影石の縁にタイルの浴槽である。白濁するときもあるが今回はしておらずきれいな湯であった。
4赤倉温泉 三の丞
赤倉温泉の三の丞に久しぶりに行った。白い天然岩の刳り貫き浴槽が美しい、綺麗な芒硝石膏泉で大きな混浴の浴室の中央部に熱い湯が湧いている。山側は天然の岩が露出している大きな空間である。
そして左右の刳り貫き浴槽に源泉が流れているが熱すぎるので一部加水している浴槽もある。天然岩は白い岩で、波紋のような模様を描き美しい底になっている。
透明、少苦味、無臭の湯が掛け流しである。国内でも屈指の素晴らしい浴室であろう。宿のエントランスも古い茅葺きの民家のようで風情がある。洗練された宿になってきた。
1那須湯本温泉(鹿の湯共同湯)
鹿の湯は大盛況であった。駐車場が一杯でしばらく待った。観光客が日帰り入浴することが多くなったのか、または全国的に広がった日帰り温泉センターの普及が原因なのか?かなりの入浴客である。ここの温泉は那須湯本温泉の酸性硫黄泉で白濁した湯と硫黄臭が特徴である。
大きな空間に6つの浴槽と打たせ湯、掛け湯があり、合計8箇所の湯船である。ほぼ満員で混んでいた。浴槽は温度差がつけられており、41度、42度、43度、44度、46度、48度の温度がある。白濁、酸味、硫黄臭あり、と観察したが48度の浴槽だけ白濁が濃いものであった。68.4度の酸性含硫黄石膏泉(H,S-Ca―SO4,Cl)で総計1040mgである。
水素イオンが2.5mg 遊離硫化水素が28.8mgでこの温泉のほとんどの個性を発揮している。PHは2.5である。塩原新湯が明礬泉、塩原元湯が重曹食塩泉または食塩重曹泉であるのにこちらは石膏泉である。改修はされ浴槽は新しくなっていたが基本的な建築は昔ながらの湯小屋で木造のこじんまりとしたものである。玄関は休憩室である。渡り廊下で沢を渡り、浴室棟に行く。板の壁の木造建築である。48度の浴槽にも入ったが10秒ほどしか入れなかった。この鹿の湯は元湯で那須湯本の14軒の旅館に引き湯されていると書かれていた。
2高雄温泉(おおるり山荘)
那須高雄温泉の火事で焼けた旅館跡におおるり山荘ができた。以前は源泉だけが川のように湧出し、野湯であった。この時は新鮮な湯を味わえる素晴らしい野湯であった。拙著、日本全国丸秘湯112選で紹介した温泉である。その後この旅館が出来てから2回目の訪問である。
しかし湯の使い方は良く豪快な掛け流しで、野湯の頃と変らないので安心した。旅館にアプローチすると大量の溢れ湯が湯の川になって流れているのが見える。硫黄分のために真っ白な川である。ここの温泉の湯量豊富さが印象付けられる。高雄湯の川と石碑が建てられていた。旅館に最初に訪問したときには、宿の横にある展望の良い高台に大きな露天風呂に豪快に湯が入れられていたが、今回この露天風呂は半分以下に小さくなっていた。そして宿の前に小さな露天風呂がもう一つ出来ていた。
40.1度の含硫黄重炭酸土類石膏泉(S-CaMgNa-SO4、HCO3)でPHは6.1とほぼ中性である。遊離硫化水素を26.2mg含有している。炭酸も261.8mgである。総量は1グラムを越した程度なので、ほぼ純な硫黄泉と言ってよいであろう。湧出量は毎分800リットルで豪快な湯量である。しかし温度が少し低いので内湯のみ蒸気で少し加熱している。白濁、まったりしたたまご味、硫黄臭と観察した。
3甲子温泉(千人風呂) 大黒屋
甲子温泉は湯量も多く下流にある新甲子温泉に引き湯もしている湯元である。この大黒屋は大きな混浴千人風呂があることで有名な温泉である。沢に向かって下って行き、橋を渡ると湯小屋がある。この中は一つの空間で大きな浴槽1つだけあり、周囲に脱衣場が付いている。大岩風呂と呼ばれている。
小屋裏の合掌梁が連続して見える大空間である。以前、雑誌通販生活で取材した時以来である。泉質は石膏泉だと思っていたが、石膏系の単純泉で総計964mgで45.1度であった。透明、少苦味、無臭のきれいな湯である。大きな浴槽は5メートル×15メートルの大きさである。深さも1.2メートルあるので、大きな容量の浴槽である。横の壁から源泉を入れている。
ここから自噴していると思っていたが、実は別の場所に源泉があり掘削自噴だそうだ。しかし古いままの浴槽と湯小屋は良い。湯の個性は少ないが雰囲気があり名湯に入るだろう。また白河藩主の別荘であった勝花亭は改築されて綺麗になっていた。このような記念物は古いままが良いと思うがどうだろうか?
4芦野温泉(つるつるの湯)
つるつるのアルカリ性単純温泉で記憶に強い温泉。このたび再訪してみた。28.1度のアルカリ性単純温泉で総計252mgの源泉であるが成分のうち陽イオンはナトリウムが66mg陰イオンが重炭酸(HCO3)が76.3mg 炭酸イオン(CO3)が52mgと純粋な重曹系になっているためつるつるが強くなっていた。
透明、少甘味、無臭で源泉と加熱湯を同時に入れて掛け流しにしている良い使い方である。内湯と露天風呂ともに四角い木製の浴槽で「つるつるやや強し」であった。内湯42度、露天風呂40度に設定されていた。露天風呂は長湯の出来る浴槽である。
1塩原元湯(ゑびす屋)
塩原元湯で大出館の下にある温泉宿である。炭酸を含む重曹食塩泉が湧出し、ヌル湯の梶原の湯源泉と間欠泉で高温の弘法の湯源泉の2本がある。弘法の湯源泉は驚異的に析出物が付着し、湧出口の下はたぬきの腹のような大きな玉が出来ている。掛け流しの床にもうろこ状に析出物が付き壮観である。
一時は析出物が浴槽の壁に付着して非常に狭くなってしまったので削ったことがあると聞いた。木造の湯小屋で混浴である。この弘法の湯源泉は約5分おきにドーッと湧出して豪快に浴槽に注がれる。夏の時期だと熱くて少量加水しないと激熱であった。
弘法の湯源泉は52.1度で白濁し、塩エグ味と弱い炭酸味がある。HS 17.8 H2S 40.3mgと硫黄含有量も多い。CO2は498.7mgである。この炭酸分とカルシウムが多量の析出物になるのである。含硫黄重曹食塩泉(S-Na-Cl、HCO3)である。
ヌル湯の梶原の湯は塩原最古の源泉と記され薄く白濁した湯で温度も39.7度とヌルメの湯である。炭酸味とたまご味が混ざった味覚で硫黄臭は弱い。HS 7.8 H2S 27.9mgでCO2は635mgである。こちらは食塩よりも重曹が多く、含硫黄食塩重曹泉(S-NaCa-HCO3,Cl)である。入浴客はみな梶原の湯に入っていた。
2板室温泉(加登屋本館)
板室温泉は以前幸の湯温泉に宿泊したことがあるが、離れていて別温泉名のため別カウントしていた。板室温泉は日帰り温泉施設のグリーングリーンでカウントした。個性のないきれいな湯で特に記憶に残るものではなかった。ただ綱の湯という綱が下げてある浴槽があってここに捕まりながら長湯をするという伝統があると聞いた。
この板室温泉は奥に温泉街があって木造3階建ての宿もある。加登屋本館だけになってしまったが風格のある建築であった。細い道に面して欄干のある2階と3階の窓が並ぶ木造3階の宿は好きである。日本温泉建築の本来の姿であった。
この本館は日帰り入浴不可で、別館のほうの御主人にお願いして入浴させていただいた。こちらの古い木造宿の1階にある小さなタイル浴槽がよかった。38.7度の源泉と44.9度の源泉があり、44度のほうが掛け流しで使われていた。
透明、無味、無臭のきれいなアルカリ性単純泉で個性のない清澄な湯であった。小さな渓流に沿った浴室で窓から流れが見える。湯量も豊富で床に湯が溢れて流れている。板室温泉は栃木の薬湯といわれる療養の名湯である。療養で有名な温泉はこのように透明、無味、無臭のことが多いのが不思議である。
3那須北温泉 泊
那須塩原方面への温泉行きの目的は、北温泉に泊まろうと思ったことがきっかけである。古い宿で江戸時代築が7500円、明治築が8500円、昭和築が9500円と決まっていてかなり安い料金である。この古い宿にゆっくりと泊まり、翌朝も遅く起きてゆっくりしようと思い今回の再訪ばかりの旅を思いついた。
明治築の部屋に泊まった。北温泉は湯量豊富で、宿の裏にみえる崖に源泉が滝のように流れ出しているのが素晴らしい温泉である。浴室は4箇所にありそのうち1箇所は女性専用で芽の湯と命名されている。
露天風呂は大きな円形の浴槽が一つのみの簡素なもので川に沿って造られ河原の湯と呼ばれている。巨大な堰堤が見え、下にはその下流の川が眺められる。混浴の内湯が天狗の湯と打たせ湯があり、大湯量が掛け流しになっている。家族湯も付いている。玄関前には共同湯のような小さな木造の湯小屋造りの外湯(相の湯)がありさらに庭先には泳ぎ湯という大プールがある。
湯量豊富な単純泉で透明、少金気味、無臭である。天狗の湯は掛け流しが多量で縁から溢れている。湯温度が高いので少量加水しているが新鮮さには問題ない程度である。
4大丸温泉
大丸温泉の湯の川は素晴らしい。何度も来ているが圧倒的な湯の量と、綺麗に澄んだ川底が美しく、国内でも屈指の名湯であろう。78.6度の単純泉で総計897mgである。濁っておらず綺麗な湯である。芒硝石膏系(CaNa―SO4)で透明、無味、無臭である。
男湯の内湯から出たところにある湯の川が大きく池のようになっており上から渓流のように湯が流れてきている。この大きな浴槽は足元から高温の温泉が湧出しており、上から流れてくる湯と合わさり適温になっている。
玉砂利が敷かれていて日光に反射してきらきらと光り美しい。白樺の湯と命名されている。さらに上流には両側が迫り渓谷のようになった浴槽がある。そして小さな滝が急な流れになった先には、一段上にまた池のような露天風呂になっている。さらに上流は女性専用浴槽であった。
川全体が温泉で大きく3箇所の混浴露天風呂があった。宿は新築になっており、綺麗な和風旅館である。風情のある造りで女性に好まれるだろう。
5弁天温泉
弁天温泉はひっそりと奥まったところに建つ一軒宿で、やや古びた旅館である。大きな内湯と混浴の露天風呂が5箇所あり樽風呂や陶器の壷風呂、鉄の釜風呂のほかに石積みの露天風呂が2つある。
総計912mgの単純泉で48度の源泉である。かなり昔に訪問したきりになっていたが、変らずに存在していた。濁った湯も同じである。毎分210リットルと湧出量も豊富である。宿の奥の崖から温泉が湧出している穴があり、金気分のために濃い褐色の析出物が溜まっていた。
そのほか敷地内で4箇所の源泉があるとのことである。湯は鉄分のために薄白濁しており鉄渋味と金気臭である。Feは1.0mgであるが新鮮な状態ではもっと多く感じる。コンクリートの浴槽の内湯はうっすらと白濁しており湯の存在感は単純泉と思えないほどである。
5塩原あら湯(むじなの湯共同湯)
塩原あら湯にまた来た。3箇所の共同湯めぐりはすでに何回もやっている。以前混浴であったが仕切りが出来たむじなの湯から行く。岩肌から足元自噴した源泉浴槽でかなり熱く長湯が出来ない。
この新湯はみな硫黄を含む酸性泉である。酸味を比べてみるとむじなの湯がH4.0mgで少酸味、寺の湯がH6.4ではっきりとした酸味、中の湯がH2.5mg で弱い酸味である。3つとも味覚や色が違うので楽しい。
むじなの湯は白濁(20センチ)少酸味、硫黄臭で3箇所のうち中間の濃さである。H2S 36.7mgという硫黄含有量である。59.2度の源泉が足元から湧出しているので熱い湯になっている。
女湯側が多く湧出しており、男湯よりさらに熱いということであった。PH 2.4 総計1792mgの酸性含硫黄明礬泉(H,S-Al-SO4)である。
6塩原あら湯(寺の湯共同湯)
小さな湯小屋で脱衣場がかろうじて2つに分かれているが浴槽は混浴の共同湯である。湯小屋の建築で塩原屈指の風情がある。
74.3度の酸性含硫黄明礬泉(H,S-Al-SO4)である。特記成分はH 6.4mg Al 102.4mg Fe 14.8mg HSO4 251mg SO4 1180.9mgである。硫黄分はH2Sの55.6mgでかなり多い含有量である。総計2099mgでPH 2.2である。
ヌル目の白濁した浴槽と熱目の薄白濁した浴槽が2つあり、ともに源泉が掛け流されている。白濁、はっきりした酸味、少硫黄臭と記録した。
硫黄臭は慣れてくると感知できなくなる。むじなの湯の後なので、実際はもっと硫黄臭がしたかもしれない。すぐ後ろにある地獄地形からの源泉であろう。濃い酸性硫黄泉であった。
7塩原あら湯(中の湯共同湯)
中の湯共同湯は小さな湯小屋ながら、男女別になっている。四角い小さな浴槽一つのみの簡素な共同湯である。以前冬に行った時は湯が枯れていたが今回は湧出していた。
火山性の酸性泉は地獄の表層水のため、冬になって雪が降ると水が地層に染み渡らないので枯れてしまう。今回は適温の湯が掛け流しになっていた。
硫黄分が多く寺の湯に匹敵したH2Sは55.4mgである。Hも2.5mgでPH 2.6である。酸味は弱いものであった。
酸性泉というより硫黄泉に近い感触である。木の浴槽が風情があって良く、湯も適温なので一番ゆっくりできるであろう。硫黄分以外の含有量が少なく総計414mgであった。
8塩原元湯(大出館墨湯)
大出館に久しぶりに訪問した。5回目くらいである。ここの墨湯が貴重で、その後も健在かなと思ったわけである。分析表を見て驚いた。3枚あり、そのうちの御所の湯源泉は国内でも屈指の硫黄含有量であった。
チオ硫酸イオン(S2O3)3.6 硫化水素イオン(HS)10.2 遊離硫化水素(H2S)72.7mgである。総硫黄は合計すると(厳密には違う)86.5mgである。
薄緑白濁で、まったりしたたまご味がして、硫黄臭がある。月岡温泉のような源泉であった。重曹食塩泉(S-Na-Cl,HCO3)で総計3213mgの温泉で温度は50.9度が毎分149リットル湧出している。
この元湯は酸性ではなくPH6.2から6.5と中性であるのが面白い。この湯が大出館のメインの源泉である。御所の湯源泉は炭酸も836mgも含有し湯口では残り香が感知出来る。飲むとたまご味の中に清涼味も分かる。
ほかに五色の湯源泉57.7度が毎分10リットル。墨湯源泉(五色の湯No3)が52.6度で毎分1.6リットルの湧出である。この墨湯源泉は特記成分に鉄分を4.4mg含有し真っ黒になっている。
さらに底には泥のようになった析出物が厚く沈殿し泥湯のようである。手で掬い取ることができる。硫黄分はS2O3 2.8 HS 7.9 H2S 35.8mgの含有量である。これに4.4mgの鉄があるとこんなにも真っ黒になるのかと思った。
写真にすると大田区の黒湯のような絵になった。真っ黒な湯である。この温泉は女性専用浴槽以外は混浴である。しかし昼の1時間だけは墨湯のところが女性用になっており30分ほど待った。しかし東京近郊で混浴の温泉があるのは貴重である。