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郡司が実際に行き、観察・記録した湯について書いています。
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温泉紀行
2011/08/10 関東 
塩原の名湯 足元湧出の岩の湯と川沿い塩の湯ほか

1千本松温泉  

那須塩原で曾遊の名湯に入ろうと1泊2日で行った。1日目は塩原を廻り、2日目に那須を廻る予定である。まず塩原の山に入る手前にある千本松牧場の温泉に再訪した。

 

ここの湯は緑色の食塩重曹泉(Na-HCO3,Cl)で54.5度の温度である。特に油臭がする個性的な温泉で、湯の感触もつるつるの湯ではじめて来た時には良い記憶になっている。

 

重曹が60%でメインの温泉ながら食塩も25%含有している。硫化水素イオン(HS)も1.4mg含有しているが硫黄臭ではなくはっきりとした油臭になっていた。

 

総計は1001mgとかろうじて泉質名が付く湯でほぼ単純泉に近い。しかし湯の存在感は色と匂いと感触に良く出ている良い泉質である。以前来たときより緑色が薄くなったように感じる。つるつるも少し弱目である。CO3は25.9mgである。

 

夏のために加水がやや多目なのかもしれない。伊豆石の内湯と大きな岩の露天風呂が2箇所ある。微緑色透明、少苦味、油臭あり、と記録した。

 

2福渡温泉(不動の湯)  

福渡温泉にある2ヶ所の混浴露天風呂は有名である。岩の湯は最近訪問したが不動の湯は久しぶりである。塩原の中心を流れる箒川から小沢に入ったところにあり、浴槽の横は沢の水が滑滝のようになっており渓流の流れが美しい。

 

楕円形の浴槽に湯が大量に掛け流しされており、新鮮な金気臭が放散された良い温泉である。この湯量の多さと湯の感触は以前と変わっておらず安心した。茶色に染まった浴槽に薄濁りの湯で、少塩味とエグ味がある。

 

匂いが一番の個性で金気臭がプンプンと匂っている。休日であったのでお客が多く、浴槽の縁が一杯になるほど腰掛けていた。分析表がないので推測であるが、塩分は塩の湯より少なく2グラムから3グラムの食塩泉であろう、鉄分も3mgくらいあると感じた。

 

3福渡温泉(岩の湯)  

岩の湯は名湯である。渓流沿いで流れの美しい背景の立地条件に自噴しており2箇所の足元自噴源泉浴槽である。

 

一つは透明薄濁りで底の玉石から湧出しているが、緑褐色に濁った浴槽は温度が高く、砂地の足元から熱い湯が自噴しており上の岩からも少量湯が落下している。この色が濃い湯は塩エグ味が濃く、不動の湯より濃い成分である。金気臭もするので5mgくらいの鉄分が含有されていると思われる。

 

44度ほどの熱い浴槽になっており冬が適温であろう。こちらは天然岩が掘り込まれて造られている。もう一つの四角い浴槽は温度がやや低く41度ほどである。薄濁りで底の大きな玉石が見えて、底から足元自噴している。

 

透明、エグ味、無臭である。鉄分も塩分も少ないきれいな湯である。水量の多い大きな川に沿ってあるこの岩の湯は景観が絶景である。開放的であるがそれがまた良いのである。変に改修されることなく、このまま変らずに存在していてほしい湯の一つである。

 

4塩の湯温泉(明賀屋本館)  

 

塩の湯の明賀屋本館の川に下ってゆく混浴浴槽群は名湯である。塩の湯は玉屋が廃業して柏屋と明賀屋本館の2軒になってしまった。建築が素敵である。明賀屋本館の山側に太古館というアールデコ調の建築があり、以前こちらに泊まりたかったが新館の部屋になったのが残念であった。

 

柏屋も入母屋の3階建てで立派な外観である。古い木造の階段を渓谷の最も底に下ってゆく。男女別の脱衣場があり、混浴の露天風呂に行く、川沿いに2箇所の四角い浴槽とその最上流に天然岩の掘りこみ浴槽がある。

 

また崖側に2つの浴槽があり、合計5箇所の浴槽である。そのうち川に面した2つの四角い浴槽は湯が熱いので少加水されており、上の天然岩浴槽が非加水で緑色に濁り一番濃い。

 

渓流の流れが一番美しいところにあると思える露天風呂で、塩原屈指の浴室である。8グラムほどの食塩泉で重曹も含むのであろう浴槽の廻りや床にはうろこ状の析出物が多量に付いている。

 

鉄分もあり湯の色は緑色になっている。緑褐色、塩甘味、金気臭と観察した。塩原の命名の由来になったとも思える濃い目の食塩泉は塩原でもかなり山の中に湧出しているのであった。



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2011/08/01 中部 
有名秘湯 名剣温泉、鐘釣温泉、黒薙温泉

 1 名剣温泉 
 川の上の絶景露天風呂。内湯は天然岩が露出した良い風情 祖母谷の引き湯 少加水掛け流し、硫黄臭多め



けやき平から15分ほどの歩きで到着する温泉宿。日本秘湯を守る会にも加入している宿である。以前は独自源泉であったが、水害で流され、以後は祖母谷温泉の引き湯である。この源泉が適度に熟成され、匂いも多く、加水も少なく祖母谷源泉の3箇所の宿では一番良い温泉であった。

 

堰堤を見下ろす川の崖の上に露天風呂が設置されている。ほかに宿の地下に男女別の内湯がある。こちらは天然岩が露出したワイルドな浴室であった。また貸し切りの半露天風呂も天然岩が迫り出した野趣に富んだものであった。

 

透明白湯の花浮遊、たまご味、硫黄臭多めと記録した。祖母谷の源泉はやや熟成すると個性が出てくるのであろう。一番良い表情を持っていた。単純硫黄泉で81.2度、総計900mgの源泉で硫黄分はHS 2.61mg S2O3 1.53mg H2S 0.19mgと少量である。総硫黄は4.33mgである。

 

重曹食塩系の単純泉であった。三角屋根の小さな宿でここで秘湯ビールと地元醸造の地ビールを飲んだ。あとは鐘釣温泉と黒薙温泉に寄るだけである。



2 鐘釣温泉 渓流露天風呂、洞窟露天風呂 再訪

 
 足元湧出源泉 大量に湧出 川に溢れ流れ去っている。 湯の流れが分かるほど。川沿いの浴槽も入浴可能 透明、無味、無臭


黒部渓谷で一番良かった湯がこの鐘釣温泉であった。綺麗な景観の渓流に足元湧出の源泉が大きく2箇所あり、それぞれ川のように溢れて、川沿いにも大きな浴槽を造っている。

 

河原の源泉が底の岩の亀裂から湯が滔々と溢れており、表面が盛り上がっている。湧出口に手を当てると凄い量の湯が噴出している。その50センチほど川側にも湧出口があり、こちらはヌル湯が大量に出ていた。その溢れ湯は流れて川沿いに浴槽をもう一つ造っている。

 

源泉のほうは綺麗に澄み切り湯の流れがはっきりと分かるほど湧出している。透明、無味、無臭の綺麗な単純泉であるが、この湧出状況に感動した。

 

すこし下流に洞窟風の源泉湧出地点があり、以前の記憶通りに存在していた。ここは底の砂地より全体から湧出し深い浴槽となっている。真賀温泉の幕湯を大きくした感じである。

 

この湯も小川になって溢れ、川沿いの大岩の横に大きな露天風呂が出来ていた。源泉は42度ほどであろう。下の露天風呂で40度くらいになっていた。温度が適温でかつ湯量も多い、天然岩より湧出する天然の妙であろう。天然記念物に認定してもおかしくないであろう。

 

洞窟風呂のほうは2つの浴槽に分かれ、奥は細く深い透明な湯がこんこんと湧いていた。それが2つ目の浴槽に流れこちらは大きな岩が覆い被さり半洞窟のようになっている。すばらしい温泉であった。

 

鐘釣温泉旅館で足湯用に湯を引き上げており、分析表があった。40.6度の単純泉で総計284mgの清澄な湯である。鐘釣温泉旅館の内湯にもこの湯を使っている。今後もこのまま残ってもらいたい温泉である。美山荘は休業であった。







3黒薙温泉  再訪  
単純泉 透明、はっきりしたたまご味、微硫黄臭  加水ながら硫黄泉の個性あり、大露天風呂と掛け流し内湯 天女の湯は渓谷の景観が良い 

黒薙温泉は宇奈月温泉の源泉で97.2度の高温の温泉が毎分2000リットル以上湧出し、25センチのパイプで宇奈月に引き湯している。総計633mgの単純泉であるが、硫黄分を含有しはっきりしたたまご味と硫黄臭がした。

 

宿は昔ながらの佇まいで建っていた。一部外壁を張り替えてあった。改築された新しい内湯と女性用の景観の良い天女の湯という露天風呂が宿にあり、50mほど上流に大きな露天風呂がある。

 

黒薙駅を出て尾根を越したところにある温泉宿で徒歩20分ほどである。途中から渓流に突き出して建てられているのが見える。古い造りで湯治宿のようだ。しかし内装は新しくなっていた。

 

大きな岩で河原に造られた大露天風呂が有名であるが大きいだけ新鮮味に欠け、内湯のほうが掛け流し量が多くよかった。高温のために加水しているが硫黄分がしっかりと残っているのには感動した。

 

源泉そのままであればさらに良いであろう。帰りは以前通ったトンネルで黒薙駅に向かった。冷風が出ており、湯治客が涼んでいた。

 

進入禁止と書いてあるが、この常連客が行っても大丈夫だというので通行したが、尾根を越えてくるよりもずっと楽であった。これで黒部渓谷の温泉巡りは終わったが魚津近くの金太郎温泉にも寄りたかった。しかし最終の列車が迫っているので次の機会にした。魚津駅をはくたか号19時15分発で越後湯沢に出て、新幹線に乗り換え東京に着いたのは22時28分であった。

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2011/07/24 中部 
けやき平温泉と野湯、祖母谷温泉 

1けやき平温泉  猿飛山荘 
簡素な露天風呂、渓流の眺めあり 祖母谷の引き湯 透明、少たまご味、硫黄臭あり 白い湯の華浮遊 

 

13日の朝は阿曽原温泉小屋を5時発とした。水平歩道までの急な登りを越え、折尾谷、志合谷を過ぎて蜆谷あたりから下りになる。しかし右足が痛みを発して曲がらなくなった。私は左足が弱いので右足にいままでほとんどの負荷を掛けていたのであろう、ついに曲げると強い痛みが出てしまった。しかしけやき平駅の放送も聞こえるほどに近くになっている。こんどは左足にほとんど任せて下ってきた。

 

けやき平の駅に着いたのは9時をすこし過ぎた頃であった。約4時間で帰り着いた。行きの5時間は掛からなかったが辛い行程であった。水平歩道の高度感にも慣れたがそういうときが危険なのであろう。気を抜かずに歩いた。

 

けやき平の周辺には祖母谷に強力な源泉があり祖母谷、名剣、猿飛の3ヶ所の温泉がある。けやき平駅のすぐ近くには祖母谷温泉の引き湯であるが猿飛山荘に温泉がありこの度入浴してみた。渓谷を望む露天風呂でいままでシャンプーがなかったのでここで頭を洗い爽快になる。

 

そして右足を温泉で暖め、冷水で冷やす方法を繰り返すと痛みが引いていった。軽症だったのである。湯
は単純硫黄泉で透明ながら白い湯の華が浮遊している、弱いたまご味で、硫黄臭があった。引き湯ながら80度近い高温なので加水であるが硫黄泉の個性は残存していた。簡素な露天風呂のみの施設で川の流れが俯瞰できる。小さな宿であった。


2祖母谷温泉  渓流の野湯 再訪 
    河原のそちこちに激熱の源泉湧出 流れ落ちるところで川水と混ぜて入浴 単純硫黄泉 透明、少たまご味、焦げ硫黄臭あり 新鮮すぎて硫黄分の個性は少ない。
けやき平から徒歩で40分ほどの奥に祖母谷温泉がある。ここには川沿いに源泉湧出地
獄があり、川水と混ぜて入浴できる。以前行ったときは、広い河原の広範囲に渡って源泉が湧出していた。湧出地点がボッケのようになり川の小さな流れと合わさり各所で入浴できた。

 

しかし今回は川が太く1本になっており、各所から湧いた温泉が熱いまま川に流れ込む形になっていた。84度とのことで熱くて手も入れられない。川と混ざる地点に適度な浴槽風の囲いが出来ており、そこで湯を攪拌しながら入浴した。

 

きれいな湯であるが硫黄分を含有し単純硫黄泉である。しかし新鮮なので一切濁っておらず透明な湯が流れていた。しかし匂いは焦げ硫黄臭がある良いものであった。含むとまったりとしたたまご味も感知できる。湧出地点の石には白い硫黄華が少量付着しており硫黄泉であることがわかる。一番大きな源泉は池のようになっていた。

 

底は硫化鉄の成分があるのか、真っ黒な砂になっている。しかし激熱でただ眺めるだけである。川の脇に湧出する小さな流れでも充分な熱さになる。また足元からも湧出しており、尻を付けていると非常に熱い。また湯の表面は攪拌しないとすぐ激熱になってしまう。上下から温泉の熱が来るので忙しい入浴になった。しかしこの自噴源泉は貴重な天然資源であろう、川の水と半々に入れないと入浴できないが、自然のままの温泉に入浴できて満足である。

 




3祖母谷温泉  祖母谷小屋 再訪 
   コンクリートの内湯 大きなコンクリートの露天風呂 83.1度の単純硫黄泉 透明白湯の花浮遊あり、無味、湯口硫黄臭

 

祖母谷温泉小屋には以前このトロッコ周辺の温泉巡りをしたときに泊まったことがある。けやき平より奥鐘橋を渡り大きく岩がオーバーハングして上部に迫り出している人食い岩を過ぎて歩いてゆく。長めのトンネルを抜けると急な渓谷であった沢は大きく広がり祖母谷と祖父谷の合流地点になる。その対岸に小さな山小屋が見える。40分ほどの歩きである。

 

コンクリートの露天風呂が一つだけの簡素な温泉であったが、今回はコンクリートの小さな内湯と女性用の露天風呂と大きな男性用露天風呂の3箇所の浴槽があった。毎分400リットルの単純硫黄泉で83.1度である。

 

加水掛け流しで使われている。透明、無味、湯口硫黄臭あり、であるが白い湯の華が多量に浮遊してい
る。しかし匂いは少なく硫黄臭はかなり減少しており加水が多いと思われる。

 

しかし川を眺める露天風呂は気持ち良く源泉地獄ではゆっくりと入れないのでここでゆっくり入浴できるのでよしとした。

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2011/07/13 中部 
秘湯仙人湯と難関 関電寮の温泉

1 仙人湯温泉  後立山連峰が見える絶景の露天風呂  小さな屋根付きの内湯はジモ専風 単純硫黄泉 透明、微酸味、湯口少硫黄臭

仙人湯遠景
 
仙人湯に行くには、阿曽原温泉小屋から2時間半の急登のはずであった。ここから仙人湯を往復してけやき平に戻る予定であったがこのコースは通行止めになっていた。驚いたが仕方がない。雪渓が崩落して道が寸断しているとのことである。予定を変更して翌日は仙人湯往復だけになりそうだ。まず登りであるが、仙人ダムまで水平歩道を行き、そこから尾根を急登するコースが今年から開削されていた。

源泉地帯 

仙人湯まで登り5時間である。下りは同じ道で3時間半とのことである。8時間半を要するコースになっていた。ここまで来たら行くしかない。早朝に出て、なるべく早く阿曽原小屋まで戻り、水平歩道をけやき平まで下れるかどうか、体調で判断しようということにした。山の朝は早い、4時起床で4時半出発であれば8時間半のコースに入浴時間1時間を見て9時間半の時間がかかるので、14時に帰り着くことになる。やはりこの阿曽原温泉小屋にもう1泊であろう。

 

予定通り4時半に阿曽原を出発して水平歩道まで急斜面を登る。まだ足元は暗い。ようよう明るくなり5時半に仙人ダムの地点に到着した。そこから鼻が付きそうなくらいの急斜面の登りである。至るところにはしごやチェーン、ザイルが張ってある。飽きずに登るしかない。朝で気温もまだあまり高くなっていなかったのも幸いして7時に約1400メートル地点で朝弁当を食べた。尾根に出るとさすがに北アルプスの一角である。後立山の稜線が見えてきた。白馬岳から鑓ガ岳、唐松岳、鹿島槍ガ岳、爺ガ岳まで一望に眺められる。ところどころに残雪も見える。

 

急な登りだが景観は美しい。7時半にやっと1629メートルピークに達し、あとは仙人湯の源泉の前を巻いて仙人湯小屋までのトラバースルートである。8時丁度に仙人温泉小屋に到着した。荷物を大幅に減らし阿曽原に置いてきたので3時間半で登ることができた。早い到着時間になって良かった。源泉のところは湯の川が流れている。かなり高温で熱い湯である。

 

少量飲んでみるとやや酸味を感じた。岩が赤銅色に染まっているので明礬系の単純泉であろう。仙人温泉小屋には露天風呂と屋根付きの浴槽の2箇所あり両方ともなかなか良かった。露天風呂は絶景の大展望である。前記の後立山連峰が浴槽からすべて見える。

 

湯は単純泉だろうが仄かな個性もある。透明、少明礬酸味、噴気臭ありと記録した。もう一つの屋根のある湯小屋の風情が良い、天然岩の浴槽にバラックのような簡素な屋根が掛かり、地元専用共同湯か個人宅温泉のようである。この湯も熱いので少量加水していた。しかし遥かに遠い山の湯で景観も良く素晴らしい温泉である。

 

江戸時代の昔から利用されていたらしく、剣岳の裏の稜線を越えてやってきたということである。約1時間の入浴の後9時に来た道を戻る。下りは急でまっ逆さまに落ちる感じである。ザイルや鎖につかまり上半身の筋肉もなるべく使うと足の負担が少ない。一心不乱に下る。阿曽原温泉小屋に12時に着いた。3時間の下りで合計2時間の短縮であった。しかしこの後に水平歩道を5時間歩くのは7時間近くの歩きをしてきたので、明日にすることとした。

 

昼から山小屋に滞在してゆっくりとした時間を過ごした。昼寝をしたり、阿曽原温泉にも入浴しに行った。山小屋はまた同じ部屋であった。



2 仙人ダム温泉 関西電力寮の浴室、特別許可 透明、無味、無臭 掛け流し 地熱のあるトンネルより引き湯



 
仙人湯からの仙人ダムに下ると、関西電力の寮が2棟建っている。そのうちの一つは外から見ても温泉とわかる浴室があり、きっと温泉であろうと推測した。帰りにお願いして入浴させていただいた。この地区の関西電力の施設は閉鎖的な状況で、「許可を取ってきたか?」とか、「一般は入室不可である」とのことである。やや粘った末に許可が出た。

 

この温泉こそが高熱隧道からの温泉を利用している。登山道も一部ダム付近は隧道に入るが中からサウナのような高温の熱気が出ており温泉源泉として充分である。この寮に貯湯槽から引いている図面があった。きれいな湯で個性のほとんどない透明、無味、無臭の湯である。浴槽から床一杯に湯が掛け流しで利用されていた。

 

唯一の個性は弱いがつるつるの感触があった。タイル貼りのきれいな浴室であった。

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2011/07/10 中部 
黒部渓谷の山の温泉 阿曽原温泉

1 阿曽原温泉  四角い露天風呂1つのみ 湯量豊富、少加水あり 単純泉 透明、無味、湯口噴気臭

 

念願の阿曽原温泉、仙人温泉に行った。宇奈月からけやき平までのトロッコの走っている区間にあるいくつかの温泉、黒薙、鐘釣、祖母谷などの温泉群はかつて入湯したことがあるが、そこから登山道を奥に歩いてゆく阿曽原と仙人温泉は以前からの課題になっていた。

 

2007年の夏にトロッコ周辺の再訪も合わせて、行くこととした。けやき平から阿曽原に向かう水平歩道は高さ200メートル以上の絶壁が続き、単独行は危険だと考え同行者を探していた。このたび8月のお盆の連休に都合が合った。7月16日に起こった中越沖地震の影響で北陸本線の夜行列車が運休になっており、初日の宇奈月発7時32分に乗車するには前日の夜に富山入りしておかなくてはならない。寝台列車の北陸号に乗りたかったが飛行機で行くこととした。羽田20時発のANA便で富山空港に21時に到着し、宇奈月に直行できる魚津に泊まることとした。魚津は特急列車も停まる駅であるが、駅前は閑散としている。駅前のアパホテルに泊まった。

 

11日の6時始発の富山地方鉄道で宇奈月に向かうと、けやき平行きの始発7時32分に間に合う。今年の8月は猛暑で東京では熱い日々であったが富山空港に降り立ってみるとこちらも東京と同じほどの熱い気温であった。7時32分に無事トロッコ列車に乗りけやき平に8時47分に到着した。ここから阿曽原温泉まで絶壁が連続する水平歩道でコースタイム5時間である。途中、昼食があるので6時間と見ると、9時発15時阿曽原着である。

 

1日目のコースは危険な崖が多いので慎重に行かなければならない。けやき平を出ると、斜め後ろに戻るように急勾配を登ってゆく。約300メートルの高低差を水平歩道まで登るのである。最初から汗だくになりながら登った。6月から続けている8階のオフィスまでの階段登りをしていたので、コースタイム通り急斜面と尾根を突破し水平歩道に入った。

 

この水平歩道は断崖をコの字型にえぐったもので登り下りは少ないが、常に危険と直面している。最初に蜆谷という沢に出たところで10時半であった。次の志合谷は長さ150メートルの真っ暗なトンネルで抜ける。ヘッドランプを出して進む。ここが11時15分である。山ながら気温は高く、トンネルの中に入ると冷蔵庫のように涼しい。足元には冷たい水が流れている。この志合谷で高熱隧道の工事の際に宿舎が雪崩で全壊し100人近くの人が亡くなったところである。

 

行く前に吉村昭の「高熱隧道」を読んでいたので、ここの怖さは分かっていた。しかし今は夏であり、水平歩道も整備されている。注意を怠らなければ良い。志合谷を越えると阿曽原までの水平歩道でのハイライト「大太鼓」の難所である。対岸には「黒部の怪人」と呼ばれる奥鐘山の大岸壁が迫り、こちらも垂直の岩肌になる。そこをコの字型にえぐった道が続いており、大太鼓のあたりは道幅も狭くなり危険である。山側に一本の
番線が這わしてあり、それに掴まりながら進んだ。

 

次の沢が折尾谷でここで昼食を取った。食後12時半に出発して1時間ほどで水平歩道から別れ阿曽原温泉に下ってゆく。すこしバテ気味であったが14時に阿曽原温泉小屋に到着した。プレハブの小屋でコンクリートの台のような基礎の上に比較的大きな小屋が建っていた。

 

冬には解体して収納してしまうので簡素な造りである。内装も天井もない。窓も開け放しでただ雨露を防ぐだけのものだ。しかし小屋には電気がありビールが冷えており、長い水平歩道の緊張を解くのには最高である。そして温泉は小屋から10分ほどの下った地点にある。階段を下って行くので、帰りにまた汗をかいてしまうのが難点である。明るいうちに入浴しに行った。

 

入り口からもうもうと湯煙を立てているトンネルの前に四角い露天風呂の浴槽があるだけである。トンネルの中は40センチほどの高さの堤防があり、その奥は湯の池になっている。そこから黒いホースで露天風呂に源泉を入れているだけの簡単な仕組みの温泉であった。湯量があり使いきれずに溢れた湯は側溝を流れて捨てられている。60度以上の単純泉であろう。きれいな湯であった。

 

透明、無味、湯口噴気臭という温泉であった。熱いので加水して適温にしているが、夏の熱い時期には加水も致し方ないであろう。適温の温泉に入り、その後この冷たい水を浴びると爽快である。この繰り返しをした。夜に再度入浴した同行者の話だと加水が少なく激熱になっていたとのことである。小屋からはトンネルからの噴気が常に見えて温泉らしい雰囲気があった。お盆の休みの最中ながら個室で利用でき、静かな山小屋であった。

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