東ティモールの温泉の後半、離島のヴィケリ温泉と 山中の秘湯 ボボララン温泉、 草津の湯畑のように湧出し多きな50mプールのような浴槽の
あるマロボ温泉の三箇所である。
3ヴィケリ温泉 (アタウロ島)
東ティモールに行くだけでも大変なのに、ディリから離島に行く温泉。船をチャーターして行くのでこのような外務省の依頼でないと非常に高価であると思われる。
朝の7時半に乗船してちょうどディリの北側にあるアタウロ島に向かう。ホテルティモールの前の海岸がディリ港になっているので徒歩ですぐである。
ホンダ製225馬力のエンジンを付けた10人ほど乗れる船でアタウロ島に向かう。2時間かかり9時30分にアタウロ島に到着した。
小さな集落があるだけで、そのほかはまるで自然のままである。アタウロ島の港からさらに小さな船に乗り換えて温泉に向かう。4人ほどしか乗れない小さな細い船で両側に転倒防止の浮きが付いているタイプである。15馬力のヤマハエンジンである。ヴィケリ温泉は2か所にあり、「岩場の湯」と「砂浜の湯」がある。
まずこの小型船で30分以上で岩場の湯に到着した。岩の多い遠浅の海岸に温泉が湧出し、浜一帯が熱い。海に負けない温泉の湯量であるので合計すればすごい湧出量であろう。
岩場の湯
透明、強塩味、無臭で源泉は65~70度であろう。NaCa-Cl泉と思われる。海水より薄いので20グラムほどの総量と思われる。岩が多いが砂地も多く足元から温泉がどんどん涌いている。
岩場の湯
「岩場の湯」と呼ぶのは次に行く温泉が砂浜の上の陸地から湧出し海に流れ込んでいるためである。その岩場の温泉から、ふたたび小型船に乗り10分ほど行くとマングローブの林が海岸に沿って広がっている。
岩場の湯
その奥の海岸が温泉湧出地であった。「砂浜の湯」と呼ぶ。海際の海岸線上に湧出地があって少量の湯が海に流れ込んでいる。しかし砂浜がマングローブで湖状に閉鎖されているので大きな円形のプールのように温度のある湯溜りになっていた。こちらでも適温である。また海岸の上にそちこちにある湯溜りにも入浴できる。
砂浜の湯 遠景
20から22グラムの海水より薄い食塩泉で苦味もあるのでカルシウムも入っているであろう。この2つの温泉はほぼ同系であろう。熱いところでは60~70度のところもある。
砂浜の湯
熱い湯口を観察すると痕跡であるが硫黄臭も感知できた。ここの景観は美しく、穏やかな海とマングローブの林の間に温泉があり、海岸から湧出している熱い湯が表面に漂っているので浅いところで掻き回して入浴すると適温である。
東ティモールでも秘湯とも言ってよい海中温泉で日本では体験できない良い経験であった。小型船から10人乗りのやや大きな船に乗り代えてティモール本島に帰った。
砂浜の湯 源泉地
途中にアタウロ島の入り江でイルカが出没する地点に行って船の上で昼食をとった。今回はイルカは現れなかったが、船から海に飛び込んで泳いで遊んだ。ディリに帰り着いたのは午後遅くであった。
4ボボララン温泉
翌日はディリより西に走り、1日かけてインドネシア国境の近くのマリアナへ行く。ここに泊まり1日目には山の中にある徒歩1時間半の野湯ボボララン温泉へ行った。翌日、このツアー最大のハイライト、マロボ温泉に行く。宿泊はマリアナの小さなホテルでシャワーも水である。最初に行ったピリラ温泉の前を通りさらに西に向かってゆく。途中ポルトガル統治時代の遺跡で休憩。城のようになっており、コーナーに青銅のカノン砲が設置されていた。
東ティモールはどこでも人が住んでおり。日本でも特に北海道のようにオールオアナッシングではなく、どこにでも民家が点在している。子供が多く、将来人口は増えるであろう。主な交通機関は裕福な人でバイクである。道で交差するバスはどれも満員である。屋根に乗っている人や、ドアに捕まっている人もいる。
マリアナ部落に着き昼食をとる。手羽先のゴーヤ炒めを食した。ボボララン温泉は地方集落のマリアナから50分の村に行きそこから急な悪路の林道を30分以上走り林道終点まで行く。 その後歩き45分ほどである。林道を行けたので歩きが半分になり、普通は歩き1時間半であるという。妙義山のような峨々たる山の中腹にあり、山道を登ってゆく。
こんなに上に温泉があるのだろうかという思いがしてきたときに、沢の水流の音が聞こえ温泉が近いことがわかった。硫黄の匂いがしたと思うと温泉がすぐあった。硫化水素イオン5から10㎎の単純硫黄泉であろう。透明、たまご味、硫黄臭である。35から36度の源泉が岩より湧出し、3本の竹の樋で打たせ湯のように垂れ流されている。ここは東ティモールで唯一、子供プールが必要な温泉であった。湧出量は毎分150リットルほどで樋の先は温泉の小川になっている。
その途中に子供プールを開き温泉を溜めて入浴した。これで海中温泉、強食塩泉のピリラ温泉、離島のヴィケリ温泉の食塩泉とワイカナ温泉の石膏泉に続き単純硫黄泉があったことになる。この日はここからマリアナ部落に戻り昼食と同じレストランで夕食を取り、リスキーホテルという物騒な名前のホテルに泊まった。
5マロボ温泉
この東ティモールの温泉行きで一番の楽しみにしていた温泉。東ティモール西部のマリアナから南に下ってゆく。大きな山を越えて行く。
東ティモールははげ山が多く密林ではない。まるで南米のマチュピチュ遺跡に行くような高低差の大きな道路である。遥か下に谷底があり、視線の上には急峻な岩山がある。
その中をオフロードの悪路を進む。高い三角形の山の裏側に回り込む形で進んでゆく。温泉の近くで道路が悪くなり、急な下りになるがそこで車を止めて徒歩で下ってゆく。車はパジェロとランドクルーザーであるが登って帰れなくなる可能性があるほどの下りである。
ここは温度もあり湯量も豊富なのでポルトガル時代に開発されて石組みの露天風呂と階段状の湯冷まし階段のような設備ができている。車の終点より徒歩30分である。行きは急な下りであるが帰りは登りで辛そうである。途中に石造りのポルトガルが作った建築跡が残っており、宿泊のホテルだったようである。
この温泉は緩やかな斜面に湧出しており、源泉湯畑から段々で下り、露天風呂に注がれているのと、湯の川になって流れ去っているのと、どこで使われているか不明だが配管によって引かれている源泉の大きく3つに分かれている。
このマロボ温泉は48度くらいの含硫黄石膏泉(S-Ca-SO4)と推測され、白濁または緑白濁、青白濁している浴槽があるので硫化水素分は30㎎ほどあるだろう。酸味はなく硫黄泉と言ってよいであろう。
総計は2500~3000㎎と推測した。薄緑色不透明、たまご味、石膏苦味、硫黄臭多し、である。毎分2000リットルほどの湧出量があり、草津の湯畑のような源泉地から湧出し、階段状の湯流しを通り50メートルプールのような大きな浴槽に入れられている。
こぼれた湯は小川になり、緑色白濁だけでなく、そちこちで青白濁した湯溜りや白濁した湯溜りを造っている。色が湯溜りによって違い、写真の構図によって違う温泉のように見える。
たくさんの撮影位置があり、非常に多くの写真を撮った。しかしこの温泉の多様な全容を理解できないほどである。大きな50メートルプールのような大浴槽は腰の深さからだんだん深くなり一番奥は足が立たないほどの2メートル以上の深さになっている。
ここの特徴は日本ではすでに数少なくなった、鉱泥が底に堆積していることである。例で言えば阿蘇の地獄温泉すずめの湯のようである。しかし入浴者が少ないので多量に残っており足元からすくって肌に塗りつけることができる。10センチ以上はたまっているであろう。
48度くらいの源泉は大露天風呂では43度ほどに下がり日本人には適温である。しかし現地人には熱すぎるようである。私の意見ではこの大露天風呂のオーバーフローでさらに下に露天風呂を造ると40度以下になって良いであろう。
湯の川の各所で写真を撮り、大きな露天風呂では絵になりづらい、段々の湯冷まし場では打たせ湯のような写真を撮った。
このマロボ温泉は日本の温泉に比べても草津ほどのポテンシャルを持っており、放置されているのは残念である。まず道路整備と現地人用のヌルい浴槽を造ることが急がれると思われる。
※これらの写真・文章の版権所有者は郡司勇です。無断でコピーしたり転載したりすると法律で罰せられます。
東ティモール温泉
まえがき
外務省から東ティモールの温泉に行って、その調査結果を相手国に報告してほしいとの依頼があった。それまでは私は東ティモールがどこにあるかも知らず。さっそく世界地図で探した。なんとインドネシアの中央にある島国である。ジャワ島とバリ島の並びにあって南緯10度ほどの位置にある。
大きなニューギニア島の西にあって広大なインドネシアのほぼ中央の島国である。セレベス島の南でオーストラリアの北である。オーストラリアのダーウィンからも航空便が出ている。日本と韓国ほどの近さである。
シンガポール空港の中庭
ティモール島は四国ほどの大きさながら東ティモールはその東半分なので広さは岩手県ほどである。しかし道がわるく東西に長いので中央部にあるディリから東に行くとバウカウという村があるが1日がかりである。
また西のマリアナという部落まで行くのも1日がかりである。全部で6か所の温泉に行ったが海岸に湧出している温泉や樋で流れている野湯があるので子供プールが必須だと思った。全裸で入るという習慣も無いために海パンも持参した。
またマラリアの危険地帯なので日本で予防薬を処方していった。これが行く日の前日から飲み始めて帰ってから1週間飲むことになる。9日間の旅行なので16粒の薬を購入したがなんと3万6千円もした。この費用は請求できるのでよかった。
シンガポールからティモールへ行くシルク航空
ほかに考えないといけないのは蚊に刺されないような予防策である。虫除けスプレーを持参して外出前に塗る。そして入浴後にまた塗るということをしないといけない。またさらに予防の意味で携帯用ベーブマットも用意した。
カメラは防水用2台である。電池がそれぞれ3個で日本とは違う210ボルトの電源だが充電器は対応しているので差し口のみ調べて日本とは違う合致する形式のものを持参した。着衣類は半分の5日分持参して1回洗濯するように考えた。
ディリの空港施設は小屋が1つのみ
今回の飛行機は羽田着発でシンガポール行きである。夜の11時台に羽田を出発してシンガポールに朝の5時半に到着する。ANAのB763で11時半発翌日5時半着であった。そして9時ごろの東ティモールの首都ディリ行きに乗り換えるのである。シンガポールの空港内でつくね、レバー入りのラーメンを食べた。
シンガポールからはシルク航空のエアバスA319という小型機である。でもジェット機であった。ディリ空港に到着した。驚くことにビルがない、平屋の屋根の高い現地の伝統建築風の建物が入国審査場であった。
空港前の広場
密林のジャングルを想像していたが、それほど木々は多くない。疎林である。乾季に行ったためでもあろうが、都市ガスが整備されていないので木々を日々の炊事の燃料に使ってしまうためであろうか?はげ山のような地形もある。
ディリ市街は車が多く、それに増してバイクが多い。125㏄から160㏄のカブ型のバイクで日本での主流のスクーターではない。これに2人乗りで数多く走っている。道端には商店があり草葺きの屋根のバラックである。地面に商品を並べて売っている。通貨はアメリカドルである。
ホテル前の露天市場
私たちは東ティモールでは最高級の日本で言えば帝国ホテル級のホテルティモールに滞在した。しかし日本で言えば場末の古びたビジネスホテルのようであった。建築は3階建てで東ティモールでは大きな建築である。
ほかのほとんどの建築は2階建てである。ついに行かずじまいであったがプールも付いている。ディリだけが自動車があり地方部落に行くとほとんどバイクだけになる。ホテルティモールは白い壁の立派なホテルで部屋はツインの広いものであった。
ホテルティモールの客室
1ピリラ温泉
このピリラ温泉はディリから西に2時間ほどの海岸にあり到着日の午後にさっそく行った。海岸の砂の中から湧出し足元湧出源泉である。熱源があり海水が熱せられていると思われ透明、強い塩味(海水と同じ)、無臭であった。まず熱源の多い地帯をスコップで掘り小さな浴槽を作った。
子供プールを波除けにして堤防を造り、底を掘って30センチくらいの深さになるような浴槽を造った。ここでの湯温は40度くらいになった。源泉は50度から60度はあると思われお尻が熱い。大潮の干潮時のみ現れるということで、北海道の水無海中温泉のようである。
砂浜に大きな犬のような形をした岩が突き出ており、その横に湧出している。砂浜と岩場の境が温泉で風景は素晴らしい。ちょうど夕日になってきたので景観はさらに美しくなった。推測で分析表を作成しないといけないので海水と同じ強食塩泉の60度と推測した。
やや苦味もあるのでカルシウム分を入れて総計25グラムほどの即興の分析表を作成した。ただし、開発してケーシングなどで湧出地帯に源泉施設を造ればさらに温度は上昇し、湧出量も多量にあると思われる。指宿の砂湯や山川の砂湯と同じである。
ここに行く途中に海岸の海水を陸地に引くことをして塩を造っている自然式の塩田があった。草ぶきの小屋が点在し廃墟のようであった。ここで作った塩が道路沿いで袋に入れて売られていた。
2ワイカナ温泉
翌日は11時にホテルを出て東のバウカウという集落に向かうだけである。翌日にさらに山奥に入りワイカナ温泉に行くためである。ホテルティモールの朝食はバイキングで主な食事はやきそばとチャーハンである。これに果物、飲み物、パンが付いている。多種類の果物がありここが熱帯に来たという思いが伝わってきた。
東ティモール第2の街バウカウに行く。車で3時間ということであったがさらに時間が掛かりバウカウに着いたのは夕刻であった。というのもディリで少々観光をした。
まず88食堂という店で海鮮ヌードルを食し、地元の市場を見学した。現地人が赤い木片を噛んでいる。私も試してみた。梅干しのような木片(固い)ものと石膏のような白い粉、草の茎を一緒に噛む。これが煙草のようなものだと説明されたが、強烈なめまいがして、酔いを発した。一時酔いが強烈で座り込んでしまった。これは1ドル弱なので以後使わず捨ててしまった。
ピンク色のきれいなホテル
地元のビールはタイガービールが主流である。ほかにギネスのようなコクの強いビールもあったが、いつもタイガービールを飲んでいた。
旧ポルトガル植民地時代の市場跡の残るバウカウのピンク色の外壁のきれいなホテルに泊まった。バウカウでは良い方のホテルである。海の見えるテラスが付いておりリゾート気分になった。小高い丘にある市街で斜面に草葺きの小屋の現地人の家が点在している。旧市場跡はヨーロッパの意匠で約400年の歴史があるという。
ワイカナ温泉全景
ホテル近くのレストランで焼き魚と肉の料理が本日の夕食であった。日本の温泉に比べ、一つの温泉に行くのに宿泊してゆかなければならないのは大変な方であろう。翌日朝からワイカナ温泉に向かう。道が舗装してなくなり、約40分は悪路の林道である。
林道の終点が温泉である。きれいな透明な温泉が長さ25メートル幅7メートルほどの大きな湯だまりになっていた。日本で言えば南紀の川湯大露天風呂であろう。ここは上に源泉の川がありこの湯溜りに2か所から流れ込んでいる。そして入浴してみると足元からも湧出している。
源泉地付近は野湯
流れ込んでいる付近は32度ほどのヌル湯で足元湧出付近に行くと35度ほどであった。透明、少苦味、石膏味、無臭であるが上から流れ込んでいる部分は仄かな硫黄臭があった。おそらく分析表に載らないほどの少量であろう。
HS 0.1~0.2であろう。ここでの分析表造りは総計1500㎎ほどの石膏泉だと推測して、カルシウム、ナトリウム、硫酸塩泉として作成した。
流れ出す部分は小川になっており、この温泉の湧出量は毎分300~400リットルであろう。バウカウから約2時間で山奥でありながら各所に民家が点在しており都市集中型の日本とは違う。山奥でも自給自足して生活していることがわかる。昔の日本でもそうであったろう。
旧日本軍が掘った防空壕もありこんな山奥にも日本軍が行ったとは驚きであった。この日はバウカウを経由して一気にディリに帰った。
有名なビーチの景色
1指宿温泉 弥次ヶ湯温泉
指宿に久しぶりに来た。「日本全国マル秘湯」という単行本以来だから、約10年ぶりである。
指宿は町中に小さな共同湯があり、古い造りで風情がある。弥次ヶ湯温泉はレトロな建築で四角い浴槽が2つあり、床が赤褐色に染まり風情がある。分析表がないので4~5グラムの食塩泉であろうと推測した。
透明ささ濁り、塩味、少金気臭ありと観察した。コンクリートの浴槽であるが底に木が敷いてある。建築は10年前と一切変わらず古い意匠のものでこのまま残してもらいたいものである。
2指宿温泉 村の湯温泉
弥次ヶ湯温泉の近くにある、足元湧出の共同湯である。2つの浴槽が並んでおり、ともに足元が源泉で自噴している。
以前は劇熱で数秒も入れなかったが、今回は適温になっていた。小屋組みの露出したひなびた浴室でささ濁り透明、塩味、無臭である。
総計はちょうど良いだし汁のようで8グラム前後と思われる。外観のペンキだけ塗り替えたがその他は以前のままでこの、古い温泉を末永く守ってもらいたい。
3山川温泉 ヘルシーランド露天風呂
山川港の先の台地には温熱地帯があり、海岸には温泉が自噴して天然足元湧出砂蒸し温泉になっている。
その台地は開聞岳と近くの屹立した岩峰が眺められ海の景観と合わさって非常な絶景である。湯は総計28,510㎎の食塩泉で温度は100度である。
大きな眺めの良い露天風呂が一つで潔い温泉施設である。加水、循環なのであろう、透明、少塩味、無臭と源泉よりも薄くなっている。
大隅半島も眺められ美しい。100度の源泉をうまく冷まして小さくてもよいので源泉掛け流しの浴槽を造ってほしい施設であった。しかし景観は国内に誇るほどの絶景である。
4古里温泉 桜島シーサイドホテル
鹿児島の桜島フェリーに乗って、桜島に渡った。古里温泉は有名な混浴風呂のある温泉ホテルではなく、内湯と絶景の高台にある露天風呂があるシーサイドホテルにて入浴した。
46.8度の食塩泉で総計4126㎎である。鉄分の成分が良く出ており、黄緑色に濁り、塩エグ味+微炭酸味、少金気臭である。
掛け流しの四角いタイルの内湯に色の付いた源泉が掛け流しになり、露天風呂は一面の海の眺望が美しい。Fe 5.9㎎、CO2 395㎎である。
5まさかり温泉 TM温泉牧場
日本で有数の析出物の多い温泉。ほかに考えると北海道の二股ラジウム温泉や島根の木部谷温泉、入の波温泉、山鳩湯くらいしか思いつかない。
とにかく炭酸を含んだカルシウムが炭酸カルシウムとなって析出し、湯口や浴槽の縁に付着する。以前来た時にあった露天風呂は析出物で埋まりなくなっていた。
内湯もあったが配管が詰まり、無くなっているので露天風呂風の内湯の半分になった浴槽に源泉が入れられていた。
土類重層泉(NaCa-HCO3)で総計4207㎎である。炭酸分は836.9㎎で1000㎎には及んでいないので含炭酸という名は付かない。しかし41.8度というやや高めの温度が炭酸を良く残している。
湧出口からは間欠的に炭酸とともに湯が湧出している。析出物はかなり削られているが縁に20センチほど付いている。湯は茶褐色で白い湯の華は浮遊している。これは炭酸カルシウムであろう。味覚は炭酸エグ味で炭酸の少刺激臭がある。日本の珍温泉として屈指の温泉であろう。
6海潟温泉 江の島共同湯
海潟温泉の江の島共同湯は古い造りで入浴料も150円と格安である。しかし湯が良く、新鮮で中央に1つだけの浴槽に掛け流しされており、良い温泉である。
46.8度の単純温泉で総計510㎎という清澄なものであるが、HS 1.6㎎ S2O3 0.7㎎を含み硫黄臭とたまご味がはっきりわかる。
またCO3(炭酸イオン)を30㎎含有し主成分になっている。そのため、つるつるした感触の良い湯である。以前に行ったときには中央の浴槽から床一面にきれいに薄く掛け流しになっていて感動したことがある。良い温泉の見本である。
1人吉温泉郷 華まき温泉
人吉はモール泉があり黒い湯に入れるが、ここ華まき温泉は黒い湯ではなく透明である。純重曹泉で34.1度という温泉である。
国内屈指の個性派の源泉で泡付きが非常に多く源泉掛け流し浴槽では身体中が真っ白になる。今回は貸切風呂で非加熱掛け流しの「岳の湯」に入浴した。
総計1558mgで湯の個性は少ないがとにかく泡付きが凄い、これは炭酸ではなく湯中に溶け込んでいた気体で酸素や窒素という普通の大気であろう。透明、少エグ味、無臭と観察した。
2人吉旅館
人吉旅館は以前に宿泊して雰囲気の良い宿だなあと思っていたら、このたび国指定有形文化財になるようである。やはりそうであったかと思った。玄関口には天井に梁が露出し古民家のようである。
客室は正統派の書院造で派手さはないが質実である。食塩重曹泉(Na-HCO3,Cl)で54.6度、総計2247mgである。
以前は黒湯であったが今回はほとんど黒くなく、淡い褐色であった。エグ味に少たまご味が残り、モール臭があった。
つるつるの湯で入浴感は良い。浴槽の中に椅子があって腰掛けて入浴するという変わった趣向である。少ないながら新鮮なために少泡付きがある。良い温泉であった。
3人吉温泉 新温泉共同湯
創建当時からの建築が残る新温泉は貴重である。ここも鶴亀温泉などとともに有形文化財物であろう。古びた木造の共同湯で青いペンキの屋根である。
白木の脱衣場であるが古色を帯びていて茶色になっている。看板類が古く古物商のようである。
単純温泉の総計490mgでモール泉である。薄黒褐色、少たまご味、モール臭ありと記録した。広い内湯の空間の両脇に浴槽があり石造りである、一つはかなり浅い。不思議な温泉である。
4白木川内温泉
足元湧出の温泉で岩肌が露出しておりその中から涌いている。この濃い緑色の岩肌が野趣に富んでおり国内でも屈指の素晴らしい温泉である。
湯の個性が良い、上の湯と下の湯があり上はHS 5.6mg CO3 49mgで下の湯はHS 14.7mg CO3 33mgである。微妙な差であるがこの2つの成分が非常に良い感触となっている。
透明、たまご味、硫黄臭である。つるつるの感触もあり極上の泉質である。それが足元から湧出しているのでこれ以上の良い温泉は考えられないほどである。貴重な温泉遺産として大事に守ってもらいたい温泉である。
5湯川内温泉 かじか荘
日本を代表する足元湧出温泉の一つと言って決して間違いない名湯である。上下に2つの浴槽がありともに足元湧出である。
湯が透明で綺麗に澄み渡っている。上の湯は大きな岩が足元にあり、その周囲が砂利や砂敷きになっていてそこから湧出する。下の湯も砂利敷きの中から湧出する。
総計153mgの極めて清澄な源泉であるがHS 3.3mg S2O3 2.0mgで単純硫黄泉である。CO3を32.9mg含有しており陰イオンの主成分になっている。つまり炭酸ナトリウム系の単純温泉である。そのため透明、たまご味、硫黄臭で成分総量にしては絶大な存在感の良い湯である。
つるつるもほかの成分が少ないので非常に強く感じられる。つるつるやや強しと記入した。宿は木造の古い宿で左側が湯治棟で宿泊棟は玄関のある右側の棟である。ここの湯に入り足元からの湧出する湯の流れに身を任し、のんびり入浴していると夢想の境地になる。温度も30度台でヌル湯である。天然記念物にしたい温泉である。
6紫尾温泉 しび荘
紫尾温泉はこんなに良かったか。と思わせてくれた宿である。以前、神社の横にある古い共同湯に入り、その後新築されてからも入ったが、今回はしび荘に入浴した。総計373mgの単純硫黄泉でHS 12.2mg S2O3 1.0mg の含有量である。
HS系の硫黄泉特有の緑色透明になり素晴らしい源泉である。たまご味に硫黄臭はやや強めにある。そしてCO3が51.6mg(36%)で多量に含有されていてここも「つるつるやや強し」である。
掛け流しで使われており良い。楕円形の浴槽と壁際に四角い浴槽もある。露天風呂は一度外に出てから入浴する方式である。単純硫黄泉の代表とも言える立派な温泉であった。
7吹上温泉 みどり荘 宿泊
吹上温泉は黒い硫化鉄が湧出する温泉として珍しい。これは町営源泉が持つもので、みどり荘でも内湯が町営源泉を使っており、黒く濁っていた。
露天風呂が池の周囲に2か所あるがどちらも独自源泉で透明、無たまご味、硫黄臭である。
みどり荘はみどり池に面した敷地に点々と離れが点在する瀟洒な宿である。10年近くぶりに再訪した。
いぜんのまま内湯は町営源泉と独自源泉の混合泉で黒色(8センチ)焦げたまご味、硫黄臭は弱い。総計297㎎でHS16.44㎎という含有である。PHも9.0でつるつるの感触もある良い湯である。
1霧島温泉 湯之谷温泉
九州温泉道という企画があり、主に私が選定した温泉施設や宿のうち88か所に入浴すると泉人になれるというものである。今回鹿児島を中心に廻った。湯之谷温泉は霧島の中心地、丸尾から少々山に入ってゆくと丸尾の滝があり、そこをすぎてすぐの温泉宿である。丸尾の滝は温泉成分が含有されていてやや白濁している。温度もヌルいそうだ。
湯之谷温泉は何度目かの訪問であるが変わらずに存在していた。木造の内湯に2つの源泉が注がれており、一つはヌル湯で炭酸泉と呼ばれている。ただし1000mgには達していないので正確には炭酸泉ではない。しかし炭酸味を感じる源泉である。
これが小さな浴槽に注がれており、大きな浴槽は44.1度の単純硫黄泉である。総計985mgでHS 0.2mg H2S 10.8mg S2O3 0.3mgの含有量である。この熱い浴槽は白濁し、少炭酸味、硫黄臭である。
ヌル湯のほうは透明白湯の華浮遊、少炭酸味、微硫黄臭であった。このヌル湯と熱い湯の混合浴槽が中央にあった。ここが適温である。露天風呂は離れにあり昔は入浴出来たが、今回は宿泊者専用になっていた。小さな岩造りの浴槽である。
2霧島硫黄谷温泉 霧島ホテル
霧島ではいわさきホテルと並ぶ大きな宿で、緑渓湯苑などとも並ぶ大湯量の温泉宿である。大きな千人風呂の内湯浴槽があり深くかつ広いので50メートルプールのような大内湯が名物である。久しぶりに訪問した。
その大浴槽の周囲にも小さな浴槽がいくつかあって、これらは鉄泉、明礬泉、塩類泉、硫黄泉と4つに分かれている。しかし違いは湯が透明か、白濁かの違いで便宜上の泉質名の違いにしているが分析表が4枚あるわけではない。
代表的な一番大きな浴槽の湯は薄白濁、少明礬味、少硫黄臭であった。奥に行くと内湯を出て露天風呂になるがここの湯が明礬味が濃く、色も白濁しもっとも成分が多いと感じた。
塩類泉は透明、無味、無臭であまり存在感はない。昔は別棟に明礬泉、硫黄泉、鉄泉の3つの浴槽が並んだ温泉があったが現在はなくなってしまった。とにかく大きな内湯で国内でも屈指の千人風呂といえるであろう。
3湯穴温泉
宮崎県に入って都城に向かう途中にある個性的な鉱泉の入浴施設。炭酸を充分に含有し、CO2 677.9mgで炭酸泉に近い。温度が22.5度しかないのでCa-HCO3冷鉱泉である。総計2723mgでカルシウムが370mgも入っているので炭酸カルシウムとなって析出し、浴槽の縁は析出物でいっぱいである。九州温泉道には私が推薦した。
湯の存在感も大きく茶褐色に濁り、炭酸鉄味、弱金気臭であった。湯面近くは析出物が迫り出し庇のようになっている。個性的温泉の一つである。
湯の色、味、匂いも変わっており、良い泉質であった。源泉に触れられるのが良い、よく加熱の温泉は源泉に触れられないで循環していることが多いが、ここは湯口のカランが自在で温泉の感触を楽しめるのが良い。たくさん投入すれば加熱掛け流しである。このような鉱泉の使い方がベターである。
4湯之元温泉
霧島の東側の山麓は宮崎県の高原町になっており、日本有数の炭酸泉湧出地域である。近くに極楽温泉、血捨の木(東霧島温泉)、皇子原温泉などの炭酸泉または炭酸含有泉がある。温泉がたいへん良い使い方になっていた。
この湯之元温泉は21.6度の含炭酸重炭酸土類泉(CO2-Mg、Na、Ca-HCO3)で炭酸の含有量は1314mgである。使い方が素晴らしい。源泉のままの高濃度炭酸泉と少加熱の中濃度炭酸泉と加熱した赤い浴槽の3ヶ所があり、炭酸の温度による含有量が入浴することによって分かるというものである。
まず高濃度浴槽に入ると炭酸清涼感が体感できる。そしてものすごい量の気泡が身体中に付着する。味は炭酸えぐ味である。匂いは炭酸の刺激臭がする。弱く加熱した中濃度炭酸泉も気泡が付き、ややヌルメの浴槽である。
加熱した浴槽は鉄分の含有が5.3mgあるので赤く濁り、炭酸味も弱くなっているに従い、鉄渋味が出てくる。匂いも金気臭である。炭酸泉の劣化の状況が分かる日本唯一の温泉であろう。
庭には以前から変わらずに飲泉場がありここでペットボトルに源泉を汲むことも出来る。宮崎の誇る炭酸泉の名湯といって間違いないであろう。
5サンヨーフラワー温泉
私が以前出版した「日本全国マル秘湯」という本で紹介した温泉。温度がありながら、炭酸分を含有しているので入浴すると少し熱く感じるという、炭酸清涼感がある。
露天風呂が掛け流しで良い。浴槽の縁は赤く染まりこの温泉の存在感がある。湯は46.1度の重炭酸土類泉(Ca、Na,Mg-HCO3)で総計3330mgとなかなか多い含有量である。
46.1度の温度ながら炭酸を647mg含有しており、長湯などよりも炭酸泉という感触がある。特記するべき際立った個性はその匂いであろう。
香ばしい匂いがして炭酸刺激臭ではない。どちらかというと掘削直後のノッチタンク入浴のような香ばしい香りである。湯口から香っている。芳香である。
6神の郷温泉
以前違う名前だったときに訪問した温泉。以前は紀の島温泉と言った。温度のある土類重曹泉(Na、Mg、Ca-HCO3)が湧出しており毎分2000リットルを誇っている。
そのため男女とも内湯、露天風呂ともに豪快な掛け流しである。ここも炭酸分を充分に含んでおり、入浴したときに熱く感じる体感清涼感を感じることができる。湯がたいへんフレッシュである。析出物も浴槽の縁に付いており雰囲気は良い。
透明、炭酸味、少香ばしい香りと観察した。宿泊者専用温泉や部屋付き露天風呂も掛け流しで良い温泉である。
7妙見温泉 おりはし旅館 宿泊
おりはし旅館の旧館の2階の風情が良く、ここに泊まりたいなあ、とかねてから思っていた。このたびまさに2階の角部屋に宿泊できた。欄間の透かし彫りが素敵である。2面が窓で廊下が廻っており古い造りで私の好みの部屋である。
デザイナー系や新築おこもり系の宿などより私はこのような昔ながらの客室に感動する。湯は妙見同系の土類重曹泉(Na、Mg,Ca-HCO3)で46.9度である。総計は2211mgと比較的少ないが湯の存在感はある。
薄緑褐色で炭酸の痕跡のある味覚で、少エグ味もある。匂いは土類臭であろう。内湯は4分の1円形の浴槽に掛け流しされている。
内湯
露天風呂は庭園風岩組である。離れにキズ湯という浴舎があり入りに行った。33度のヌル湯でキズを治すのであろう。また51度の源泉も引かれているので熱い湯にも入れる。